50 / 115
第50話 君が甘い
ゾクゾクって、すごいのが足元から背中、首筋を通って駆け抜けた。
「……ン……い、と」
舌ったらずな感じで君が俺の名前を呼んだのは、その唇が、トリュフチョコを口に咥えているから。
「……」
どうぞ? の一言がトリュフのせいで言えそうにないから、首を傾げて、上目遣いで、赤い頬で、教えてくれる。
「……いただきます」
「ン、んっ……っ」
とっても行儀が悪いけど、いいよね?
「ン、んんっ」
「……」
「ン、ひゃっ、ぁ、い、とっ」
けっこう美味しいね。このトリュフ。中が、生っぽいチョコなんだ、半分クリームみたいなの。
君が俺の口の中に押し込もうとするのを舌で受け取って、でも、その舌先に乗っけたまま歯で齧った。少し柔らかいチョコがふたりの唾液と混ざって溶けて、流れて、舌がチョコの味に染まる。君の舌も、俺の舌も同じ味。チョコをチョコで掻き混ぜるみたいにキスをした。外側にまぶしてあったココアパウダーは大人味で苦くて、激しいキスで唇にいっぱいついちゃって。舐めて取ってあげたら、君が肩を竦めた。
その仕草が可愛くて、もうチョコなんてとっくに消えた唇にもう一度齧りつくようにキスをしたまま押し倒す。
「伊都、キス……クラクラする」
「……」
君が、俺のベッドに寝転がってる。
それを上から手をついて、眺めてる。毎日使ってるベッドに、甘いキスで瞳を潤ませた君が寝ている。
大きいんだね。俺って、君よりけっこうでかいんだ。キスに感じた日向がきゅっと身体を縮めたら、白い肩が、俺のトレーナーの襟口から出ちゃってる。
「ひゃああっ」
その肩を歯で齧って、ちゅって、音を立ててキスをした。ここはあんまりキスマークが付かないけれど、それでも君は嬉しそうにしてる。
「四つあるから、今度は俺が日向に食べさせてあげる」
「……ン、ぁ、やっ」
やらしいこと、してるよね。これって、ちょっと、引く?
「あ、やぁぁっ、ン」
君の着ている俺のトレーナーを捲り上げた。そして、トリュフを歯で砕いて、舌で溶かして、君の、ピンク色をした乳首のところに塗りたくってみたりしたら、やっぱ。
「それ、気持ちイイ、ゾクゾクする」
引かない?
「イ…………イっちゃいそう」
言っておきながら自分で照れた君が真っ赤になって、また肌を火照らせてる。恥ずかしさと興奮で体温を少し高くして、そんで、乳首がきゅっと硬くなる。
「あ、あぁっ……ン、ダメっ、伊都ぉ」
チョコ味な乳首を口に含んで、舌先で転がして、舐めて、吸って、綺麗なピンク色一色に戻るまで、ずっと。
「伊都、あの」
「どうかした? 甘くて、喉渇いた?」
「ううん。違う。そうじゃなくて」
日向が手を伸ばして、ベッドについた俺の手首に触れた。あったかい指先がそっと触れると、ゾクッってする。わずかな感触だからこその興奮。
「もう片方も……して?」
甘えるように額を手首に擦りつける君は本物の猫みたいで、愛しくてたまらない。
「したいけど、でも、俺、手がまだ」
かじかんでるんだ。本当に冷え切ってたから。こうしてたら、少しずつ体温が戻ってきたけど。
でもピンク色に染まった肌色の君は俺がその体温に追いつくよりも先にもっと火照ってしまうから、触れたら、びっくりすると思う。
「ひゃあああっ」
「ね?」
ツンって、ちょっと意地悪をした。敏感な日向の敏感そうな脇腹を人差し指でツーッとなぞって驚かせたりして。
「……ン」
「日向?」
君の感度って、たまにズルすぎると思うんだ。
「……くなるよ」
「?」
あったかい手で俺の、冷え切って、これでも君のおかげで少し温かくなった手を掴んで、自分へ引き寄せる。そして、きっと今、すごく忙しなく動いてるだろう胸の上に乗っけて、その冷たさに息を飲んで。
「俺に触ったら、あったかくなるよ」
「……冷たいよ?」
「っ、平気っ……ン、ぁ、伊都っ」
君が甘い、みたい。
「やぁぁ……ン、あ、乳首っ」
「気持ちイイ?」
冷たい指で芯を持った乳首の頭のとこを撫でて、摘んだ。ふたりの体温の差にびっくりしてきゅっと縮こまった、硬くてコリコリってする、美味しそうな飴玉みたいで。
「あっはぁっ……ン、ぁ、伊都っ」
白い肌はスポンジケーキみたいに滑らかで、優しくて、指に心地良くて。いつまでも何度でもキスしたくなる。
「日向、少し腰浮かせて?」
「あっ、う、うん」
セックスするから、君が着ている俺の服を脱がせなくちゃ。
日向が真っ赤になりながら腰を浮かせて、部屋着の下、ズボンを引っ張ってズリさげる。
「っ……ご、ごめんっ、あの」
「……」
「ごめんねっ。あのっ、あのっ」
パニックになって慌てふためていて、ちょっと、危なかった。
「日向、先に言ってよ。暴発するかと思ったじゃん」
「だって」
「濡れちゃった? 下着まで、雪沁み込んだ?」
「……」
ズボン下げたら、裸だなんてさ。
「俺の下着、サイズ違うけど、貸したのに。イヤだった?」
「もっ、もお! 意地悪だっ!」
「うん。ごめん。意地悪した」
我慢しきれなくなった日向がまっかっかになって怒って、その口をへの字に曲げた。怒った顔も可愛いんだ。俺の、好きな人は。
「……し、したいって思ったから、その」
「うん。めちゃくちゃ嬉しいし、エロくて、スケベで、イイと思います」
「なッ! 何言って! 伊都がエロとかスケベとかっ」
だって、エロくて可愛いんだから、俺の、最愛の人は。
「言うよ。日向にエロいこと、したくてたまらないんだから」
「っ」
「俺もしっかりちゃんとスケベだよ?」
君が甘いから。
しっかり立ち上がったペニスの先から零れる液は、とろりとしてて、水飴みたいに透明で。
「やっ! ウソっ、伊都っ! そんなのっ」
だから、舐めて飲んで、君のこと、君の味を知りたくて仕方ないんだ。
ともだちにシェアしよう!