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第4話

的を射ない話し方と、カズに対する不誠実な態度。そのどれもに苛々して、俺は思い切り隼斗を睨みつけた。何を言っているんだ、と問い詰めるように。 だがその怒りは、彼には伝わってくれない。 「綺麗な目」 そう呟いた彼の手が伸びてきて前髪を払う。そのまま下に降りた手は俺の顎を掴んで、視線が合うように固定された。 余裕を携えたままの彼の表情に気圧されて、どこか気後れした気持ちになる。 そんな中紡がれたのは、今までで一番信じがたい言葉だった。 「ねぇ、僕とも付き合ってみない?」 「……は?」 思わず気の抜けた声が出るほどの、理由も意図も分からなければ、冗談としか思えないお願い。だがたとえ冗談だとしても、彼はカズの恋人なのだから俺の答えは決まっている。 「お前となんて無理に決まってるだろ」 そう言えば、彼は小さく声を出して笑った。 「ははっ、すっかり嫌われちゃったみたいだね。でももう少し考えてから返事はした方がいい」 考えるも何も、俺がカズを裏切るようなことをするはずがない。それなのに、隼斗からは尚も異様なほどの自信が伝わってくる。何故だろうと訝しむ俺に、愉快そうな声が届いた。 「ヒント1、和佐は僕のことを愛してる」 まるでクイズのように、彼は軽い調子でその理由を説明し始める。 「ヒント2、僕はある目的のために和佐と付き合い始めた」 相変わらず直接的でない話し方に、俺はなんとか理解をしようと、頭を働かせながら彼の話を聞いた。 「この2つで解いてほしいけど……そうだな。とっておきのヒント」 そう言った彼の顔が徐々に近づいてくる。不思議に思いはしたが、考えるのに必死でその意図に気付くのが遅れた。それをいいことに、彼の唇が俺のそれと重なる。 好きでない人とのキスなんて、相手を黙らせるために何度もしてきた。だから今更、こんなことで動揺はしない。 「さて、俺が『もう少し考えてから返事はした方がいい』って言った理由は?」

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