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第12話

痛い、抜け。 息も絶え絶えにそう訴える俺の声は、やっぱり隼斗には届かないらしい。 「僕はね、亜紀ちゃんが誰とどんなセックスをしていようがどうでもいい。ううん、むしろこうやって足掻いてくれた方が亜紀ちゃんらしくて好きかな」 紡がれたのは意味の分からない言葉。 もうこの2日間で、こいつを理解するのは無駄だろうと諦めたほどだ。 「頭、おかし……っ」 嫌われる為に取った行動で喜ぶなんてMかよ、と罵ってやりたい。でも、俺が苦しんでいるこの状況で笑っていられるこいつがMだったら、世界中の人間がみんなMになってしまう。 誰か隼斗の気持ちが分かるなら、俺に解説してほしい。嫌われ方を教えてほしい。 「褒め言葉ありがとう」 「っー!!!」 褒め言葉だと言っておきながら気には障っているのか、彼の指が一気に奥まではいってくる。 ぐるりと大きく掻き回される感覚に、思わず鳥肌が立った。 「動、くな……!」 「ダーメ。ちゃんと慣らしておかないと痛いでしょ?」 そう聞こえたかと思えば、後ろの圧迫感が増す。どう考えても1本の動きではないそれに、指の本数が増やされたのだと悟った。 「っ……ぅ……」 服の袖を噛んで、必死に声を抑える。 痛みと苦しさと悔しさで視界が滲んで、すごく惨めな気分だ。 「んー、この辺だと思うんだけどなぁ」 どこかを探るような指の動き。 嫌な予感が頭をよぎると同時に、その予感は現実となる。 「んぅっ!?」 「……ココか」 隼斗の指が一点に触れた瞬間、今までとは違う感覚が身体に広がった。 痛みとは明らかに違うそれ。 そういう場所があるとは知っていて、これは仕方のないことだと分かっているのに、反応してしまった自分への憎さが募る。 そんな俺の気持ちを知ってか、隼斗はそこばかりを執拗に攻めてきた。 「もっと気持ちよくしてあげる」 ナカに入ってるのとは反対の手が前へとまわされ、萎えきっていたそこへと触れる。 そのまま元気をなくしていればいいものを、幸か不幸か快感を拾いやすい体質の俺のそれは、隼斗の手の動きにによってだんだんと硬度を取り戻していった。 「っ……」 「意地を張ってても辛いだけだよ。全部周りのせいにして、早く楽になればいい」 いっそう速まる動きに、身体が高みへと昇っていく。抑えきれない快感は、気持ちいいを通り越して苦しい。 「ん、あ、あぁーっ!」 ふと気を抜いた瞬間に全身から力が抜けて、閉じきれなかった口からは自分のものとは思えない声が漏れた。 「く、そっ……」 すぐに冷静に戻る頭が自分の痴態を責め立てる。恥ずかしいなんてもんじゃなくて、今すぐこの場から消えてしまいたい。 「どうする?やめる?」 でもその気持ちも、煽るような隼斗の言葉で離散した。 「カズさえ人質に取られてなければな」 俺は絶対に自分からは逃げない。 カズを取り戻すまで、俺は逃げない。 「……やっぱり亜紀ちゃんは、こういう時が一番『綺麗』だ」

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