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第15話

亜紀ちゃんの情報を集めるのはとても簡単だった。同じようなことをしているのだから、繋がる人間も重なってくるわけで。聞いてみれば、僕とも亜紀ちゃんとも関係を持っている奴だっていた。 クラスを聞いて、彼が帰宅部だということも知って。それでも理由がないから話しかけられない。彼もタチのようだから、身体の関係を迫ることもできなかった。 それでも興味が失われることはなく、むしろ見えないという状況がより期待を膨らませていいく。 ようやく彼に出会えたのは1年生の7月、球技大会でのこと。 僕はバスケ部だから当然バスケを選択していて、偶然にもそれが重なったようだった。 第一印象は、イメージしていたよりもよく笑う人。無気力なのかと思えば意外に負けず嫌いで、亜紀ちゃんには人間味があった。 その時に生まれた気持ちは落胆。 アキ先輩ならきっと、いつもと変わらない笑みでスポーツもこなす。何でもないような顔でゴールを決めて、それを見た周りの人間たちが勝手に騒ぐ。 ーー似た人なんているはずない、か。 勝手に期待して勝手に落胆して。それでも素人ばかりの球技大会は本気を出す必要もなく暇で。 だから何となく見続けていた。 見続けて……気付いてしまった。 亜紀ちゃんとアキ先輩との、決定的な違いに。 「さっすが亜紀、ナイスゴール!」 「カズは一回も決めれてないもんな」 「僕はパスが上手いからいいの」 何を話しているかは、ここからは聞こえない。それでもある1人の隣に居る時、亜紀ちゃんの表情が和らぐことが分かった。 楽しい時の笑いではなく、安心した時に自然と出る微笑み。それは彼が、亜紀ちゃんにとって何かしら特別な存在であることを物語っていた。 すぐに恋愛に結びつけるのはおかしいのかもしれないけれど、その結論に至るだけの違いがそこにはあって。でも情報によれば、彼の好きな人は海外に居るらしかった。「もし近くにいるなら、そいつだけを抱いてるはずだろ」と情報提供者は笑う。 でもそれは、一般的な見解に過ぎない。 わずかに感じた違和感。 少しだけ、亜紀ちゃん自身に興味を持った。 亜紀ちゃんが笑いかける存在は、彼にとって何者なのか。 『好きになったら終わり』という噂に、どこまでの理由があるのか。 それを突き止める前に興味を失うのは、早すぎるような気がした。

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