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第17話
和佐と付き合うまでにはそれなりに時間を要した。彼はいたってノーマルな人間であったし、亜紀ちゃんと同じ帰宅部となれば時間も合わない。
その上、特に目立つタイプでもないため、情報を集めるにも一苦労だった。
それでも時間を見つけては付き纏い、嘘を言っては彼の情に訴え、2ヶ月目にして辛うじて『恋人』という立場には就くことができた。
でも、それだけではまだ足りない。
亜紀ちゃんの世界を奪うには、
和佐の方から愛される必要があるからだ。
中学時代の自分を思い出しては『尽くす恋人』を演じ、彼の性格も把握しながら『和佐にとっての理想の恋人』へと近付いていく。
そしてその目標もほぼ達成されたと見え、約1年をかけた計画は、漸く最終段階の一歩を踏み出した。
「長かったなぁ……」
そう溜息をつくも、全く後悔はしていない。
食い付くか半信半疑でかけた脅しに、見事にハマってしまった亜紀ちゃん。
僕の本性を知っていながら、遠回しにさえ和佐に別れろとは言わない亜紀ちゃん。
本当に抱いてみても、苦しそうな顔はするくせに逃げはしない亜紀ちゃん。
どこまでいっても『和佐の為』を貫く亜紀ちゃんの行動は期待通りで、期待以上だった。
思いのほか口が悪くて、人一倍プライドが高いのも好きだと思った。
一番笑えたのは、僕と約束しておきながら他の男を抱いていたこと。少しくらい傷付いた顔をしているのかと思って早めに行ってみれば、他の男の喘ぎ声が聞こえる上に、当の本人は闘争心剥き出しだったのだから。
1度では壊れないとは思っていたけれど、予想以上に頑丈で安心した。1年もかけて準備をしたのだから、僕が飽きるまでくらいは楽しませてもらえなければ困る。
別にアキ先輩を恨んでいたわけではない。
だからこれは、復讐とは少し違う。
亜紀ちゃんのことは好きだけれど、それは勿論、俗に言う愛してるの意味とも違う。
じゃあなぜこんなに執着しているのかという頭の片隅からの問いに、僕が答えることはなかった。
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