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第18話〜嘘を纏う日常〜

結局夜になっても眠れない時間は続き、今までにないほどハッキリとした意識で鳴り響く目覚まし時計を消した。 ーー行きたくない、休みたい。 小学校以来あまり抱いたことのない、そんな感情が心を占める。 それでもまだ今日は木曜日で、今日も明日も学校には行かなければならない。 意を決して立ち上がると視界がクラクラして、全身が寝不足を訴えた。 寝かせてくれなかったのはお前のくせに、と自分の身体にさえ怒りが湧く。 母は仕事、妹は朝練。いつも通りの、1人の朝食。咀嚼を繰り返せば、起きた時はスッキリとしているように感じた頭が重さを増していった。 それは冷たい水で顔を洗っても変わらなくて、でも、家を出る時間は刻々と近づいてくる。 「行ってきます」 誰に言うでもなくそう呟き、重い鞄を背負って玄関の扉を開ける。朝特有の凜とした空気感が、ボーッとした脳に少しだけ刺激を与えた。 * 「亜紀、おはよー!」 教室に着いて初めに聞くのは、愛しい人からの挨拶。 冷たい水よりも、朝の空気よりも、カズの声が一番脳に効く。 「おはよ」 カズの笑顔はいつも通りキラキラしていて、思わず昨日のことなんて全て忘れてしまいそうになった。何も知らないのだから当然なのに、咎められないことを赦されたと錯覚してしまう。 それでも昨日までは感じなかった罪悪感の塊が、確かに心の奥底で蠢くのを感じた。それを認識すると同時に、隼斗の顔がチラついては消え、消えては浮かんでを繰り返す。 「亜紀?どうかした?」 その幻影を完全に消そうとじっとカズを見つめていれば、心配そうな目がこちらを見つめ返した。そのおかげかスッと幻影は消えて、視界にはカズしか映らなくなる。 「何でもない」 「嘘だ、いつも以上にボーッとしてる」 「4時間睡眠だったからな。ゲームしてたらいつの間にか寝る時間過ぎてた」 「バカだなぁ。早く寝ないと成長止まっちゃうよ?」 「それでもカズより背は高いけどな」 いつも通りの軽口の応酬に、気分が軽くなっていく。やっぱりカズの隣に居るのは心地よくて、ここから離れることなんて出来そうにない。 隼斗とクラスが違うのがせめてもの救いだと思いながら、カズの席から2つ右へと離れた、自分の席へと腰掛けた。

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