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第23話

結果は62対68。 カズが調べたところによると今日の相手は今までに何度も県大会に出場している学校で、これだけの差で済んだのは大いなる善戦の結果だと言えるらしい。どちらのチームの表情も晴れやかに見えたことが、それを物語っていた。 「亜紀、最後まで見てから帰ってもいい?隼斗も最終試合まで終われば、今日はもう解散なんだって」 隼斗が来るのなら帰りのナビ係は要らないはずなのに、むしろその方がいいはずなのに、その言葉に軽く頷いてしまう。 1つはこの空気感にもっと触れていたかったから。もう1つは、今日の隼斗とならマトモな会話が出来るのではと思ったから。 どこの誰かも知らないのに、真剣な姿を見ているとわくわくする。 最後の試合が終わった頃には目が痛いほどに乾いていて、そんなにも集中して見ていたのかと驚いた。 「あっ、隼斗もう外に出てるって」 携帯片手にそう言ったカズが俺の腕を引く。 半ば引きずられながらついていけば、そこには制服姿の隼斗が居た。 「お疲れ様ー!」 そうカズが手を振って近付けば、隼斗は一瞬だけ苦々しげな顔を見せる。 「あんまりカッコいい姿は見せれなかったけどね」 でもそれはほんの一瞬で、すぐにいつもの、カズと居る時の隼斗に戻った。 「和佐たちも、こんな時間までお疲れ」 「そんなことないよ、すっごいカッコ良かった!ね、亜紀」 すかさずフォローをいれようとするカズが、俺にまで同意を求めてくる。 素直に頷くのは癪だと思いつつも、事実なのだからと軽く首を上下に動かした。 そんな俺に、隼斗は珍しく驚いたような表情を見せる。 「何か食べに行く?今日なら隼斗の分、亜紀が奢ってくれるよ!」 「……なんで俺なんだよ」 そう突っ込む俺に対して、すぐにノってくるかと思った隼斗は反応を返さない。不思議に思ってそちらを向けば、少しの沈黙のあとこう答えた。 「あー、思ったより疲れてるからパス。それにたぶん母さんが、夕飯作ってくれてるし。せっかく待ってもらったのにごめん」 「ううん、気にしないで。また今度行こ!」 その言葉を合図に帰路につく。 歩道は狭いため自転車を引きながら3人で並べるはずもなく、前から順に隼斗、カズ、俺の順で並んだ。 最初に隼斗と話した日と同じように、カズが一足先に別れを告げる。 今日1日で隼斗の株が上がったからか前のような息の詰まる感じはなく、歩調はそのままに隼斗の後ろをついていった。 いつ、お願いの解消を頼もうか。 そのタイミングを見計らいながら。

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