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間違えられた冬真 #3 side T
「この人、水島君じゃない!」
みどりさんが声を上げた。それをきっかけに皆が一斉に僕を見つめ、その後、僕の周りに集まった。
「何だって?」
「そんなバカな!」
田中君、副島君と矢継ぎ早にみどりさんに言った。
「だってほらっ!」
みどりさんはシャツをまくった僕の左腕を彼らに見せた。
「ない!でもこの傷は?」
「いや、水島のはこんな傷じゃないよ。」
「そうなのよ!だからこの人は別人。」
「いや、ちょっと待てくれよ!赤の他人でここまで似るか?」
「それもそうだな。でも…」
「本人に聞くのが一番よ。ねぇ、もしそうだったら首を縦に振ってね。あなた…水島君じゃないわよね?」
みどりさんの問に僕は首を縦に振った。皆が一斉に息を飲んだ。
「一人でここまで来たの?」
今度は首を横に振る。
「それなら、この人と一緒に来た人…今頃、血相をかいて探し回ってるわよ!この人、体が不自由みたいだし、話せないみたいだし…」
「取り敢えず、俺は公園の管理事務所行ってくる。副島はこの人がいたベンチへ急げ!」
「おう!」
男性陣は出口へ向かって猛ダッシュ。残った女性陣は僕を気の毒そうに見つめた。
「ごめんなさいね。こんなことになってしまって…それに…見せたくないものまで晒してしまったみたいだし…」
みどりさんが僕の左腕の傷や痣の痕を隠すように袖を元に戻した。僕は首を横に振った。
「ありがとう。あなた、とても優しい人なのね。あなたがどこの誰だか分からないけれど…傷ついた分、これから良いことがたくさんあるわよ。きっと。」
みどりさんは僕の左腕をポンポンと軽く叩いた。
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