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間違えられた冬真 #5 side S (Soejima-kun)
『類は友を呼ぶ』
語彙力のない俺の頭の中で、そんな言葉が渦巻いている。俺の前に立って微笑んでいるのは、冬真さんのパートナー。めっちゃイケメン。そりゃそうだ。冬真さんの隣にいる人だもん。ハイスペックイケメンに決まってる。藤原さんとはまた違うタイプだけど。藤原さんが甘いマスク系ならば、この人は…そう、爽やか系。まっ、どっちにしても女子メロメロ。冬真さんってば、こういう人がタイプなんだ。ちえっ!最初から勝ち目なしじゃない。一瞬でも夢見た自分が愚かでした。でもこの人…どこかで会ったことがあるような…
「添島さんですね?はじめまして、里中葉祐です。先日は冬真と俊介がお世話になり、ありがとうございました。今日はわざわざすみません。」
葉祐さんは深々と頭を下げた。
「あっ、添島貴一です。はじめまして。お世話っていうか…逆に迷惑を掛けたというか…あの…詳細聞いてます?」
「ええ。皆さんのバーベキューまでお邪魔したみたいですね。すみません。でも、本人は生まれて初めてのバーベキューだったのでかなり楽しかったみたいです。あの日は随分と饒舌でしたから。」
「饒舌?あの日の冬真さんは確か声が…」
「ええ。声は出ないけれど、唇の動きを見れば大体分かりますから。」
「ええっ?読唇術?」
「いやいや…分かるのは冬真だけです。付き合い長いですからね。」
そう言って、葉祐さんは隣に立つ冬真さんの頭を撫でながら笑った。
この人…笑顔がいいな。
男から見ても清々しいほどの爽やかな笑顔。イケメンで爽やかで、笑顔が素敵なカフェの店主…すげぇモテるんだろうなぁ。今でもこんなに格好いいんだから、若い頃はさぞかしモテたんだろうなぁ…
「冬葉、こちらに来てご挨拶しなさい。」
「は〜い。」
返事と共に現れたのは一人の少年。将来はモデルか俳優?そう考えずにはいられないほどの綺麗な顔立ちの美少年。冬真さんのミニチュアというか…冬真さんと瓜二つ。そして、何故か手には不釣り合いな女性誌。
「息子の冬葉です。」
「こんにちは。里中ふゆはです。」
葉祐さんが紹介すると、彼はぺこりと頭を下げた。
「添島です。こんにちは。えーっと…その雑誌…君の?」
「はい。ふゆくんのです。」
「洋服とか綺麗なお姉さんとかに興味があるのかな?」
冬葉君は心外な!という眼差しを俺に向けた。
「違うよ。しんちゃんがでているの。」
「しんちゃん?」
「ふゆくんのお兄さん。」
「へぇ〜冬葉君のお兄さんはモデルなんだ。ああ!だから今日、撮影かなんかで帰って来られないんだね。」
「さつえい?ちがうよ!しんちゃんは今日はカンヅメちゃん。」
「カンヅメ…ちゃん?」
「うん!うみのくるしみのさいしゅうけいたい!」
「生みの苦しみの最終形態?」
「こ〜ら!ふゆ〜は〜!早く宿題終わらせないと、おやつのプリン、パパが食べちゃうぞ?」
「あーん!いやいや!とうまパパ、ふゆくんのプリン、ようすけパパにたべられないようにみはってて!」
「うん。冬くん…宿題…頑張って。」
「ありがとう!とうまパパだいすき!」
冬葉君は冬真さんの頬にキスをした。冬真さんもお返しとばかりに冬葉君の額にキスをした。
「騒々しくてすみません。今、コーヒー淹れますね。良かったらこちらにどうぞ。早速打ち合わせを始めましょう。それと…私から一つ提案があるのですが、聞いて頂けますか?」
葉祐さんは冬真さんと冬葉君、二人の肩を抱きながら言った。
爽やかイケメンと超絶美人、その二人の間でじゃれつく可愛い美少年…この三人があまりにも絵になり過ぎていて、ドラマ観ているみたい。
残りの二人の息子もきっとイケメンなんだろうなぁ…どっち似なんだろう?
いや、待て待て!今日ここへ来た目的は、深田と水島の結婚式の打ち合わせだろ?しっかりしろ!俺!
でも…葉祐さんと冬真さん、このイケメン二人…どうやって今に至ったんだろう?付き合い長いって言ってたよなぁ…
だから…そうじゃなくて、結婚式の打ち合わせ!
俺の頭の中で色んな思いが交錯する。どうしたものか…天井を見上げる俺に冬真さんが声を掛ける。
「添島くん…大丈夫?」
振り向けば、冬真さんが潤んだ瞳で俺を見つめる。
うわぁ…もう勘弁してくれ〜
その瞳、その表情、理性失いそうなんですけど。
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