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間違えられた冬真 #6 side F
今日はね、何と!冬くんちのお庭で結婚式をしているんだよ!すごいでしょ?誰のかというと…きいっちゃん(パパ達は添島くんって呼んてるけど)のお友達の。知らない人ばかりだけど、ご挨拶したら、『偉いね』って褒められた♪うふふ。きいっちゃんは最初、葉祐パパのお店でパーティーだけしようって思ってたんだけど、葉祐パパがどうせなら人前式のガーデンパーティーにしようって言ったんだって。冬くんには難しい言葉はかりで全然分からないや。でも、おうちのお庭で結婚式って、とても楽しい♪二人共新郎って呼ばれていて、一人は冬真パパとちょっとだけ似てる。その人は昔、事故にあってそうなっちゃったらしいんだけど…歩いたり、立ったりすることがあんまり出来ないんだって。きいっちゃんが教えてくれたよ。でも、今はニコニコちゃんでとーっても嬉しそう♪もう一人の人はずっと泣いているの。何でかな?他のお友達にずっと笑われてるよ。
「ねぇ、ようすけパパ?」
「何だ?」
「シンロウちゃんはなんで、ないているの?けっこん…いやなのかなぁ?」
「違うよ。あれは嬉し泣きっていってね、悲しいわけじゃなくて、人は嬉し過ぎると、ああして涙が止まらなくなるんだよ。深田君は水島君のことが大好きだったんだけど、何度も断られ続けたらしいから……心身共に傷を負った人は、負い目があって、そういうとこ頑なになっちゃうからな…でも、良かったな。二人共幸せそう。」
葉祐パパは何だかちょっと寂しそう。大丈夫かな?楽しいお話に変えてあげなくっちゃ!
「ねぇねぇ。パパたちのけっこんしきはどんなのだったの?」
「パパ達は結婚式はしなかったんだよ。」
「どうして?」
「その頃、冬真パパはずっと入院しててね。だから、市役所へ行って結婚しますよっていう紙を出しただけ。でも、どうしても冬真パパを喜ばせたくて、元気になってもらいたくて、その紙は二人で出しに行ったんだよ。」
「びょういんにいるのに?」
「うん。本当はダメなんだけど、先生に何度もお願いしたんだ。でも、全然許してもらえなくてさ。それを見兼ねた航が『私が付き添いますから』って言ってくれて、それでやっと許してもらえたんだ。」
「わたくんカッコいい!とうまパパ、よろこんだ?」
「ああ。何か月ぶりかの外だったから、体はちょっと辛そうだったけどね。とっても嬉しそうだった。後から聞いたんだけど…嬉しくてその夜はたくさん泣いちゃったって。」
「それって、うれしなき?」
「だな。きっと。」
「よかった〜あっ!そうだ!ようすけパパ?『イケメン』ってなぁに?」
「何だよ唐突に。どうしてそんなこと聞く?」
「きいっちゃんがね、『ふゆはのかぞくはスゲーなって。ぜんいんイケメンな上に、一人はちょうゆうめい人だし。うらやましいぜ』って。ちょうゆうめい人ってしんちゃんのこと?」
「多分。」
「じぶんの子どもがちょうゆうめい人で、パパはうれしい?ふゆくんもちょうゆうめい人になったほうがいい?」
「そんなの関係ないよ。まぁ、真が自分の好きなことを生業にしているのは嬉しいけどね。冬葉の言葉を借りるなら、パパは皆が元気でニコニコでご飯を美味しく食べてくれたらそれで良い。欲を言えば、冬真パパが少しでも穏やかに暮らせたらそれでもう充分。水島君もそうだったらいいな。そうすれば自ら生を放棄するなんてこと…もうしないだろうから…」
「葉祐パパ?むずかしいことばばっかり!ふゆくん、ぜんぜんわからない!」
「ごめん、ごめん。まぁ、とにかく、パパは冬葉を見てるとハッピーちゃんになれる。冬葉は毎日楽しそうだからね。」
「うん!」
葉祐パパはもう寂しいお顔なんてしていない。良かった!パパはもうすっかりニコニコちゃん!冬くん知ってるんだ。葉祐パパが笑うとね、お店のお客さんが「キャー」って言うよ。今もきいっちゃんのお友達の女の人が「キャー」って言ったよ。でも何で?不思議だなぁ。
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