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かわいいところ #1 side T

組み敷いた僕の中に葉祐はまさに今、自身の欲望を注いだ。荒い吐息と汗ばむしなやかな筋肉、いつもとは違う光を放つ野性味溢れる瞳、何度も耳元で僕の名前を囁く甘く切ない声、普段見せることのない、僕だけに見せる葉祐の別の顔。男の顔。彼によってもたらされた快楽の波間に身を任せる僕は、その顔を、その体を、愛おしく思っている。いつも。 「大丈夫?」 僕の中で断続的に打つ脈が落ち着きを見せた頃、葉祐が尋ねた。その顔はまるでいたずらが見つかった仔犬のよう。もうすっかり、いつもの葉祐。 「ごめん。無理させた。今抜くから。」 「ダメ。」 「でも…」 「まだいて…ねっ?」 葉祐は早い瞬きを繰り返しながら僕を見つめ、少し間をおいて、なだれ込むように僕の耳元に顔を埋めた。程なく耳に甘美な痛みが走る。甘噛みだ。 「もぉ〜かわいいにも程があるぞ。冬真。」 「うふふふ。50過ぎのおじさんに…言う言葉じゃないね。」 「事実だから仕方ない。」 「それなら…葉祐だって…充分かわいいよ。」 「えーっ?俺?どこがだよ!冗談は辞めてくれよ。」 「そうだなぁ……一生懸命…腰を振ってるところ…とか?うふふふ…」 僕が笑ってそう言うと、葉祐はまたしばらく目をパチパチとさせた。 「くっそ〜今日は小悪魔モードかよ!やっぱりダメ!今すぐ抜く!」 「えっ?ヤダ。どうして?」 「一回抜いて、また入れる!今日はお前の言う『かわいいところ』いーっぱい見せつけるからな。覚悟しろよ。」 葉祐は少し乱暴に僕から出て行く。『くちゅ』『こぷっ』という音が何とも恥ずかしい。そう考える時間も許さじと、素早くゴムを取り替えた葉祐は、そろそろと僕の中に戻ってくる。その静かな侵入に反した熱と硬さを取り戻して。 「はぁ……気持ちいい…いつだって最高だよ…お前は…」 静寂から一転、葉祐は僕の中に一度、グッと刻むように打ち付けた。 「ああん…」 不意に訪れた快楽から仰け反って逃げようとする僕の腰をガッシリと押え、今度は僕の胸の果実を甘噛みした。 「あっ、それ…ダメ…いっしょ…ダメ…」 「今夜は『ダメ』は許しません。」 「えっ?……あっ…ああん…」 葉祐はその刻みつけるような打ち付けを、今度は大きな律動に変える。バーンバーンという大きな音が響き渡り、その度に僕自身の先端から、ぽたりぽたりと快楽がこぼれ落ちていく。 「あん……あん…ああん…」 「ほら、全然『ダメ』じゃない。」 葉祐はニヤリと笑い、野性味溢れるあの瞳で僕を見つめた。そして、その律動を早く細かいものに変える。 「はっ…あん…あん…きっ…気持ち…いい…葉祐……」 「ああ…俺も…やっぱり今夜は寝かせてやれないな…」 「…たまには…いいんじゃない?二人して…寝坊するのも…子供達も…いないことだし…」 その言葉が葉祐に火をつけたのか、葉祐は僕自身を少し捻るように握った。 「あっ、ダメ……それもダメ……」 「子供達が帰ってくるまで、お前のかわいいところぜ〜んぶ堪能するからな。」 葉祐はまたニヤリと笑った。ちょっと意地悪っぽく。でも、そういう葉祐も大好き。いたずらっ子みたいでかわいい。惚れた弱みって…こういうことかな?

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