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無題 #1 side S

どうしてもあるシチュエーションで書きたくなって書き始めたのですが… しばらくお付き合い頂けると嬉しいです。時系列は冬葉が幼稚園児、真祐が高校生です。 今のところ、ぴったりなタイトルが思い浮かばないので、無題にしておきます。そのうち変更します。 ******************** 「わたしがきたからには、もうだいじょうぶ!あなたは、そのままそこにかくれていて!」 「何だ?あれ。」 帰宅するや否や、葉祐はリビングで1人、手足をバタつかせる冬葉を見てそう言った。 「ほらっ、あれ。」 冬葉の腰に巻かれているヒーローの変身ベルトを指し示す。 「どうしたの?あれ。」 「将吾おじさん。ねだったワケじゃないみたい。後でお礼の電話入れておいて。」 「おう。……で、あれは?」 今度はソファーの上のこんもりとしたブランケットを指し示した。 「冬真。ヒーローごっこに巻き込まれた。」 「あー」 「とうっ!えいっ!やーっ!…………やったー!」 見えない敵との戦いに勝利したのか、冬葉は手足をバタつかせるのを辞めて、今度は両手を上げて、ぴょこぴょことジャンプをした。 「さあ、もうでてきてだいじょうぶ!わるものは、ふゆくん…じゃなかった、わたしがやっつけました!」 ブランケットが急にもぞもぞと動き出し、ふうっという吐息と共に、中から冬真が顔を覗かせた。そんな姿も美しいこの人は、息子の僕ですらドキリとさせる。案の定、パートナーであるもう一人の父親は、隣で胸をときめかせていた。 「ありがとう…ございます。あなたのおかげで…助かりました…」 「えへへへ。」 幼児らしく笑ったのも束の間、冬葉は左手を冬真の頬に乗せて言う。 「とうまパパのびょうきは、ふゆくんがやっつけたからね。もうだいじょうぶだよ。」 その時に見せた冬真の少し驚いたような、何かに気が付いた様な表情を、僕は多分、一生忘れられないだろうなと思った。

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