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無題 #1 side S
どうしてもあるシチュエーションで書きたくなって書き始めたのですが…
しばらくお付き合い頂けると嬉しいです。時系列は冬葉が幼稚園児、真祐が高校生です。
今のところ、ぴったりなタイトルが思い浮かばないので、無題にしておきます。そのうち変更します。
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「わたしがきたからには、もうだいじょうぶ!あなたは、そのままそこにかくれていて!」
「何だ?あれ。」
帰宅するや否や、葉祐はリビングで1人、手足をバタつかせる冬葉を見てそう言った。
「ほらっ、あれ。」
冬葉の腰に巻かれているヒーローの変身ベルトを指し示す。
「どうしたの?あれ。」
「将吾おじさん。ねだったワケじゃないみたい。後でお礼の電話入れておいて。」
「おう。……で、あれは?」
今度はソファーの上のこんもりとしたブランケットを指し示した。
「冬真。ヒーローごっこに巻き込まれた。」
「あー」
「とうっ!えいっ!やーっ!…………やったー!」
見えない敵との戦いに勝利したのか、冬葉は手足をバタつかせるのを辞めて、今度は両手を上げて、ぴょこぴょことジャンプをした。
「さあ、もうでてきてだいじょうぶ!わるものは、ふゆくん…じゃなかった、わたしがやっつけました!」
ブランケットが急にもぞもぞと動き出し、ふうっという吐息と共に、中から冬真が顔を覗かせた。そんな姿も美しいこの人は、息子の僕ですらドキリとさせる。案の定、パートナーであるもう一人の父親は、隣で胸をときめかせていた。
「ありがとう…ございます。あなたのおかげで…助かりました…」
「えへへへ。」
幼児らしく笑ったのも束の間、冬葉は左手を冬真の頬に乗せて言う。
「とうまパパのびょうきは、ふゆくんがやっつけたからね。もうだいじょうぶだよ。」
その時に見せた冬真の少し驚いたような、何かに気が付いた様な表情を、僕は多分、一生忘れられないだろうなと思った。
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