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Assortment #2 〜Twitter詰め合わせ〜
葉祐さんに拝みに拝み倒して買ってもらった電動アシスト付き自転車。もちろん、チャイルドシート付き。これで冬葉を公園に連れて行ける。
楽しみにしてろよ、冬葉!
これでお前の年長さんの夏休みは完璧だっ!
2017.7.2
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「そんなこと言って、直くんが楽しみたいだけなんじゃないの?」
と半ば呆れ顔の真。
「せっかくの夏休み、近所の公園ぐらい連れてってやりたいだろ?ここだけだと、どうしても大人との遊びばかりになっちゃうし。」
「そうか。確かにそうだね…」
真は静かにそう言った。
後日、もう一台届いた電動アシスト付き自転車。真が自分で買ったみたい。さすが作家先生!お金持ち〜
2017.7.2
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「ゔぅ〜あつ〜我慢出来ねえ!冬葉!じゃぶ池行こうぜ!」
「じゃぶいけって、なぁに?」
「お前、じゃぶ池も知らねぇの?」
「うん。」
「園児の夏の醍醐味さっ。よし!出かけるぞ!」
「なおくんごうでいくの?」
「直くん号って?」
「じてんしゃだよ。ふゆくんのおせきがついてる、なおくんのじてんしゃ。うふふふ。」
両手を口元で重ねて、ずっと笑っている冬葉。
「何がそんなにおかしいの?」
「おかしいんじゃなくてうれしいの!だって、ずっとのりたかったんだもん。なおくんごうのうしろのおせき。」
全く…可愛い過ぎるぜ!コノヤロー
2017.7.3
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「ねぇ?これっておデート?」
「俺は真以外とデートはしねぇ!だけど、お前だけは特別な。あっ、でも、真ちゃんにはデートって言うなよ!」
「なんで?」
「真ちゃんは怒ると怖いから。」
「うん…わかった。」
2017.7.3
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「明日は醤油かなぁ?それとも塩かなぁ?」
「塩はレアです!それに、最近醤油は来ませんよ。」
「いやいや、どちらも二号。」
「ああ!なるほど!まぁ、どの味が来ても楽しみですよね♪」
「そっ、眼福♪眼福♪」
園児の帰った職員室で先輩と後輩が、さっきから調味料の話で花を咲かせている。
「さっきから何の話?目玉焼きか何か?」
「違いますよ〜先生のクラスの里中冬葉君の送迎、明日は誰かなって話です。」
「冬君の?」
「ええ。保護者が全員かっこいいって奇跡ですよね〜毎日誰かとお話できる先生が羨ましいです!」
「でも、醤油とか塩って…何?」
「イケメンを調味料に例えるでしょ?あれですよ、あれ。醤油一号はイケメンパパ、醤油二号はイケメンお兄ちゃん。塩一号は美人パパ、塩二号は最近よく来る、可愛い居候君です。本当、先輩がおっしゃるように眼福です♪」
「へぇ〜なるほど!上手く例えたもんね…じゃなくて、二人共仕事しようね!」
2017.7.4
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原稿に追われた僕は、直くんと冬葉に遅れること数回、今日、近所の公園のじゃぶじゃぶ池に初参戦した。直くんも冬葉もすっかりここの人気者。
「直生くん」
「直くん」
「直生兄ちゃん」
様々な総称で呼ばれ、たくさんの人から愛されている直くんは、とても生き生きとしていて眩しいくらい。
「ふゆくん」
「冬葉くん」
「冬葉」
冬葉もまた様々な総称で呼ばれ、たくさんの人から愛されている。血は繋がっていないものの、明るく社交的で可愛い弟は僕の自慢でもある。
「しんちゃーん!」
満面の笑顔で僕を呼ぶその愛苦しさに、その場にいる人は目を離せない。その度に僕は優越感に浸るんだ。
2017.7.5
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「世界で一番可愛いのは冬真だな。」
「いやいや、世界一は真ですって。」
あーあ…今夜も始まった葉祐と直くんの世界一どうでも良いディスカッション。これを終了に導くのはいつだって…
「えーっ!ふゆくんは?ふゆくん、なんばんめ?」
「「…やっぱりが冬葉が世界一可愛いな!」」
「えへへへ♪」
2017.7.6
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いつもならとっくに寝ている時間なのに、ベッドの中で舟を漕ぎながらも、何故か必死に起きている冬真。時計が0時を回り、さすがに注意しようと思った時、冬真が口を開いた。
「ようすけ…たんじょうび…おめでとう…」
「えっ…?」
あっ…今日は七月七日。俺の誕生日。
「子どもたちよりも…だれよりも早く…言いたかったから…」
笑顔でそう言った後、冬真はすぅっと眠りに就いた。相変わらずのあどけない寝顔を見つめながら心に誓う。この愛しい存在と子供達を守るため、今年も一年頑張ろうっと。
2017.7.7
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「いちごはかわいいし…チョコバナナはおいしいし…ぐるぐるしてるのもいいよね…」
幼稚園へ向うバスの中、冬葉は想いを馳せるように遠くを見つめて呟いた。
「何の話?」
「ケーキだよ!ようすけパパのおたんじようびのケーキ!きょうはどんなのかなぁ…たのしみだなぁ〜うふふふ…」
「…ったく…お前の誕生日じゃねーんだぞ!ちゃんと準備したのか?プレゼント。」
「う〜ん…パパのえはかいたけど…それよりもだいじな、じゅうだいなにんむが、ふゆくんにはあるんだよ。」
「重大な任務?」
「うん。ふゆくんがいつもどおり、パパのおたんじようびをたのしみにすることだよ。」
「それが重大任務?」
「うん。そうするね、とうまパパがニコニコちゃんになるんだよ。とうまパパのニコニコがいちばんだからね!ようすけパパは♪でも、びょうきになったらたいへんだから、ようちえんのたなばたのたんざくに『とうまパパのびようきが、よくなりますように』ってかいたんだよ。」
2017.7.8
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「とうまパパ、ケーキはチョコとバナナのケーキだよ。」
「それとね、からあげとりんごジュースがみえてね…あとはね…」
ソファーに座る僕とキッチンの間を、行ったり来たりしている冬葉はずっとヒソヒソ声。
「どうして…こえ…小さいの…?」
「しーっ!ふゆくんはね、いま、スパイなの。」
「スパイ?うふふ…冬くん…何しらべてるの…?」
「きょうのパーティーのごちそうだよ。しんちゃんってば、ぜんぜんおしえてくれないんだもん。パパもきになるでしょ?」
「パーティーのごちそうより…冬くんのほうが…きになるかも。」
「なんで?」
「かわいいから…」
「えへへへ♪」
2017.7.9
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葉祐さんのバースディパーティー終了後、部屋に戻って来た真に労いの言葉を掛けた。
「お疲れ!」
「うん。」
「冬真さん、パーティーの間ずっと笑ってた。スゲー幸せそうだった。良かったな。」
「うん…」
「冬葉も嬉しそうだった。」
背後であり得ない寝相で眠る冬葉に、二人で視線を送る。
「うん…」
「なぁ、真?」
「うん?」
「よく頑張ったな…今まで。」
「えっ?」
「葉祐さんのバースディパーティーじゃ、頼るところなかっただろ?普段世話になりっ放しな分、お前の性格じゃ、俊介さんにも頼みづらいだろうし。」
「……」
「今まで本当によく頑張ったな。」
「なっ何言ってるの?変なこと言わないでよ。」
目も合わせず、そそくさと布団に潜る真。
「今度からは俺を頼れよな。」
背後から頭を撫でて、おやすみと言い、俺も布団に潜った。程なく横から手が入って来る。何も言わず握ってやると、安堵したように握り返すその手。
素直じゃねーな…全く…
2017.7.10
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「ええっ!冬葉!お前、目玉焼きにソースかけるの?」
「うん!きいろのところとまぜまぜになるとおいしいよ!」
「へーっ!…って、お前何かけてるの?真!」
「塩。さっぱりしてて、僕はこれが一番好きなんだ。」
「直生!朝からうるさいぞ!」
「痛っ!ゲンコツはひでーよ。葉祐さん。」
「早く食って学校行け!」
「はーい。」
直生が来てから、我が家は随分と賑やかになった。
「あーっ!笑ってないで助けてよ!冬真パパ〜!」
直生が冗談っぽくそう言うと、それまでクスクスと笑っていた冬真が、いよいよ堪えきれなくなって、声に出して小さく笑い出す。朝から本当にうるさいけれど、子供達は元気で、冬真はずっと笑ってる…
言葉とは裏腹に幸せを噛みしめる朝の光景。
どうぞこの時間が長く続きますように…
2017.7.11
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