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Assortment #4 〜Twitter詰め合わせ〜
今日から九月。新学期を迎えたのは冬葉ただ一人。それに納得がいかない冬葉と直生との間で、朝から攻防戦が続いていた。
「なんで?なんで、ふゆくんだけようちえん?」
「仕方ねーだろ?大学生はまだ夏休みなんだから。」
「ズルーい!じゃあ、ふゆくんも、きょうからだいがくせいになる!」
「ワケの分からないこと言ってねーで行くぞ!幼稚園。」
「いやだ!ふゆくん、もっとあそぶ!なおくんと、こうえんいく!」
遊びたいと駄々をこねる冬葉。去年までは見られなかった光景。今年の夏休みは冬葉にとって、かなり充実していたんだと痛感した。冬葉の日焼けした肌がそれを物語っている。
こういう時の冬葉はかなり頑固で手強い。こんなところは父親譲り。でも、その牙城を崩してくれるのもやっぱり父親で…
「冬くん…ぼく…おさむくんが心配。幼稚園に行って…ようす…見てきてくれないかな?」
「えっ?」
「おねがい…冬くんだけが…冬くんだけが…たよりなんだ…」
「わかった!ふゆくんにまかせて!なおくん、はやく!はやく!」
2017.9.1
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「う〜ん!これこれ!ずーっと食べたかったんだよ!お父さんのカルボナーラ!おいしー!」
執筆活動が進まず、ホテルに缶詰状態だった真。帰宅してすぐ、冬真におねだりして作ってもらったのはカルボナーラ。口のまわりをクリームだらけにしてむしゃむしゃ食べる姿は、何とも無邪気で、やっぱり子供。
「カルボナーラなら、今日日どこのコンビニでも売ってるぜ?いくらでも食べられただろ?」
愛しの真をカルボナーラに取られ、不服そうに直生が言った。
「お父さんのカルボナーラは他のと全然違うんだ!直くんも食べてみなよ!食べれば分かるから。」
真は直生にあ〜んってパスタを食べさせた。勿論、無意識。
「うまっ!かぼちゃ?かぼちゃの味がする。入ってないのに…」
「ソースにかぼちゃのペーストが入ってるの。ねっ、外じゃ食べられないでしょ?もう一口食べる?」
「うん。」
「あ〜ん…」
パスタを褒められた真とあ〜んしてもらった直生。意味は違えど満足気な二人。コイツら絶対バカップルだな。うん。
2017.9.2
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帰宅してリビングに入ると、窓際に椅子を出し、冬真が座っていた。その後ろ姿を、葉祐が見守る様に遠くキッチンから見つめていた。
「お父さん…どうかしたの?」
「いや、別に。」
冬真のそばに行こうとすると、葉祐がそれを制した。
「どうして?」
「ちょっとだけ…放っておいてやれ。今日はさ、お祖父さんの命日なんだ。」
「お祖父さん?」
「そっ、お前の曾祖父ちゃん。」
「あんまり病院には来てくれなかったっていう?父さんは会ったことあるの?」
「俺?ないない。お前の曾祖父ちゃんは、めちゃめちゃ忙しい人だったからね。ほとんど一緒にはいられなかったけど、そこはやっぱり身内。偲びたいんだろう。」
「ねぇ、お父さんのお祖父さんってどんな人だったの?」
「さぁな。」
「本当は知ってるんでしょ?」
「まぁね。きちんと自分の口から話してくれるよ。そのうちにさ。」
「冬真さんは秘密だらけ。」
「美人には秘密がよく似合う。」
「うん。冬真さんは秘密、父さんは陽だまりかな。」
「なんじゃそりゃ?」
「よく似合う…だよ。」
2017.9.3
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冬葉をお迎えに行った直くんがやっと帰ってきた。
「どうしたの?随分遅かったじゃない?」
尋ねても生返事ばかりの二人。
「はぁ……」
「なおくん…ふゆくんもいっしょにあやまってあけるよ。」
「本当に?悪いな…冬葉。」
「いいんだ。なおくんとふゆくんは、『こころのとも』でしょ?」
「冬葉!」
かっちりと抱き合う二人。謝るって?一体どんな悪さをしたっていうの?
二人はおずおずと冬真の前に揃って並び、何かを差し出した。それは、冬真のアトリエに飾ってあるプラモデルと同じロボットのキーホルダーだった。
「幼稚園の帰り、コンビニで冬真パパが大事にしているロボットのくじを見つけたんだ。一等はスゲー大きいフィギュアでさ。それ当てて、冬真パパを喜ばせたかったんだけど…ハズレでこれになっちゃった。持ち合わせもなくてさ。小さくなっちゃったけど、これで我慢して。本当にごめんね。」
二人揃って頭を下げる。冬真は小さく微笑んで、二人の頬にキスをした。これはこれで嵐の予感…
2017.9.4
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<こぼれ話>
我が家のなんちゃってカルボナーラもかぼちゃのペースト入れます(ペーストがないときはフレーク)。冬真が真祐に作ったカルボナーラは、これをイメージしています。
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