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第6話 いつもより『余裕』のない俺。

叶の部屋は少し前まで殺風景だったけど、クローゼットの横にあるハンガーには俺が昔少しの期間だけしか着れなかった白いコートが掛かってあった。 要するに俺のお古なんだけど……俺のものだった物が叶の部屋に存在しているのが、堪らなくなる。 叶はそんな俺の目がコートに行ったのに気が付いたらしく、 「杉原先輩に譲って頂いた洋服は大切に着させていただいています。有難う御座いました」 ……お願いだから、そんな嬉しそうに笑わないで!! 今から俺が『シたい』ことに罪悪感を感じてしまうデショ。 (…ここは先手を打ってしまおう) 卑怯かな…と思いつつも、俺は叶の細い肩を掴んで 「彼氏を自分の部屋に入れたら……『期待』しちゃってて良いんだよね?」 その答えは…… 「外は…寒いですから」 ちょっとちょっと叶? それは俺が言っているイミ分かってるの? 分かってないの? もうここは直球でいくしかないかな……俺はそのまま、叶の顎を取り唇を重ねた。 ……柔らかい弾力のある叶の唇は、真冬なのにかさつきはなく潤っていてかさねているとキモチイイし口内を俺の舌で犯すと、答えてくる。 キスがどんどん深くなり……叶の息が上がっていくのが分かるので、俺は叶の唇から離れると、……お互いの混ざりあった唾液が糸を引く。 糸を引くほどの深いキスで、気が緩んだ叶をこのまま『その気』にしてしまおう。 「このキスの…先に叶と一緒にいきたい」 「……ぇ…」 「叶……セックスの『合意』出してよ」 「!!」 「俺だけに見せる顔、見せてよ」 俺なりにセックスアピールの言葉をフル動員させて……言葉で煽ってみた。 駄目かな……テクニックはあっても、『言葉』のテクニックはまだまだかな……と不安になりながらも叶の反応を観察していると……ゆっくり頷いてくれた。 「……」 「『合意』?」 「……はい」 俺は念のため再確認した。 「……本気にしてもいい?」 叶は顔をリンゴのように真っ赤にして、こくりとまた頷いてくれた。 俺はここまで漕ぎ着けた安堵感と叶のひとつひとつの動作や仕草が可愛くて……堪らなくて、少し乱暴にベッドに叶を押し倒して、俺は上に馬乗りになった。

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