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第116話 素質十"二"分な俺 -2-

ジンの案内で植物園内を歩き、俺は……俺達は目的の場所に着いた。 夜中の園内は今日の赤い月でなくとも、どこか不思議な空間に感じられた。こういう雰囲気、面白いよな? また来たくなるよなー、何となく。 左右、上下、どこに視線を向けても面白そうな植物が絡み合っている。月明かりだけで暗いから良く分からないけど、それでも面白い。 こんな感じで俺はキョロキョロ、ジンは黙々と歩いている。 そしてしばらく歩いた先で、ジンが歩みを止めたんだ。俺は正直ジンにぶつかるところだった……。うん、前方確認は大事だな。 「さ、今からこの"花"に登るよ」 ジンの言葉に彼の示した方向を見れば、巨大な花が……ってか、"花"より"木"という方が見た目的には正しい気がする……。 そんな茎の太い何十メートルの身長か分からない花……が咲いていた。 「花? これ……花なのか!?」 「そうだよー。"百年花"って言う、百年に一度花を咲かすんだ。とても珍しい品種な上に、更に珍しく"妖精珠"が育っていて……多分、今夜……珠が弾けて生まれるよ」 「な、何が……」 「妖精、だよ!! ようせい!!」 「妖精!?」 うおー……マジでか……。 どうやって登るのかと思っていると、ジンに手招きをされ、俺はそちらに向かった。 「これを利用して登るんだ」 ジンの指すのは、花の太い緑色の茎に階段の様に生えた淡く光るキノコだった。これは月夜茸が……形からいったら、猿の腰掛の様な……? とにかく俺達はクルクルと都合良く螺旋状に生えているこのキノコを利用して花の上に上がる事にした。 「何でジンは妖精珠の事を知っているんだ?」 「俺の一族は半分"妖精族"なんだ。だから、俺も半分は妖精の血が流れている……んだ」 「へぁ? そうなのか???」 「ああ、そして今回の"妖精珠"を見守る任をおってるんだ」 なるほど? 「それに、この植物園の管理責任は俺の一族が代々していて……。ま、色々絡んでいるんだけどさ、そいう事だ」 「ふぅん?」 「さ、頂上に着いたぞ……」 花の上は不思議に中央が地面に近い平面としており、ここにもポコポコと巨大キノコが幾つか生えていた。 しかも"花"と言っているけど、何だか巨大すぎて"花"という感じが薄い……。周りに花弁が幾重にもあるんだけどな? そして、その平面の中央に繭の様な物が立っているんだけど、多分これが"妖精珠"……。 「やぁ、まだ妖精珠は割れてないな」 俺の予想通りの言葉をジンが言ってくれた。やはりこいつが、だ。 「これが? 妖精珠って……デカいんだな……俺等くらいない?」 「これは"特別"なんだよ。さて、運よく今から寝ぼすけ妖精"様"のお目覚めの様だ」 「え……?」 「ほら、よく見ててごらん? 動き出した」 俺はジンの言葉に素直に従って、生命的な律動を繰り返す妖精珠へ期待の視線を向けた。 そして、その瞬間は程無くしてやってきたんだ…… ―ピシ……ピシピシピシ……ピシピシピシ……ビシッ!!! 割れは段々と広がり、全体にヒビが入ったかと思うと、それは音も無く粉砕して周りに七色の光を放った。 そしてそんな妖精珠が無くなると、注目の人物が静かにそこに立っていた。 「……………………」 ―……妖精珠を割って、中から全裸の青年が現れた……!? 「……妖精の……王様だな。"男性体"とは珍しい」 うん、確かに付いてるな。男だ。ジンの言葉に同意する。 全裸なのに、すごく堂々としているもんだから、もうそれが通常に感じてくる。なんての? オーラ? オーラ的な何か? そんな生まれたての妖精の王様は色素の無い透明に感じるサラサラした髪に、白い肌、瞳は薄いグレーで華奢そうな身体の背中には蝶の様な形の翅が6枚付いていた。身長は170前半位か? ジンを並べて想像してみると、その位に感じる。 俺がそんな事を考えている一方で、王様はジンに話しかけていた。 「……そこの……は我を見守っていた者か? 少なからず妖精の血が混じっていると感じるが?」 「はい、そうです。俺の一族は妖精の血が混じってます」 「ふむ。では、我にこの世界での"名前"を付けよ。それと喋りはあまり堅苦しくなくて良いぞ。面倒臭いからな」 「分かりました。それでは……名前は"レグルス"、で。」 「レグルス?」 「レグルス……"小さな王"って事です」 「ほう? そんな意味が? ……レグルス……。良し、承知した。我は"レグルス"と名乗ろう」 決めた名前をとても気に入ったのか、王様……レグルスはニヤリと笑い、何度か頷いている。 そんなレグルスにジンは持ってきた色とりどりの花が入った籠を差し出した。 「では、レグルス、好きな"花"をどうぞ」 「うむ、選ぼうか。ふむ……?」 お? 何だ? 俺の髪の色と青い花を見比べてるけど……。あ。青い花を食べた? もぐもぐと籠から青い花だけを選んで口に運んでいる。 「…………この位食べれば……良いか?」 「そうですね。変化してきましたよ」 「すげ……青だ……!」 透明に近かった髪の毛が選んだ花の色に染まっている。 そう、まるで"青い花の色"の髪になったレグルスは、自分の髪を少しいじってから視線を髪の毛から俺へと向けてきた。 「そこの……我に、早急に食事を。お腹がとても空いてる……早く、早く……お前のを出して我にたくさん……くれ……!」 そう言いながら百年花から生まれ出た裸の麗しい妖精王・レグルスは俺を見つめて切なそうに、にじり寄って来た。何で俺? 「ん~……どうやら光栄にも、アサヒはレグルスに早速"ご飯"を所望された様だな……」 「ごは……ん?」 「……これだよ……アサヒ、動かないで…………」 「え? じ、ジン!?」 そんな……そんな……服の上から……ペニスを触って……? 「百年花から生まれ出る妖精王の"食事"は、主に……"精"……"魔力"なんだよ……。アサヒは魔力が高いんだな?」 「せい? まりょく?」 「……アサヒ、突然だけど……レグルスにアサヒの……上げてくれないか? 妖精族の最初の"ご飯"……しかも男性体のレグルスはちょっと……他の妖精と"違う"んだ」 「ちがうのか……!?」 そう言いながらジンは相変わらず、服の上から俺のペニスの形を辿るように手を動かしている。 ハの字眉で明らかに困り顔をして、俺にお願いを繰り返すジン……。何だよ、その表情は……ゾクリとくる……。 「……アサヒ、本当に突然で戸惑うと思うけど……。……頼むよ……」 「……ジン……」 「……あまり言いたくないけど、俺の無茶苦茶なお願い、きいて…………くれるんだった、よな?」 「……それは……」 「アサヒ……」 「……………………」 ……確かに言った。……言った以上、やるしかない、よな……!

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