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第124話 ウロボロスの血族 -3-
現れた人物の声に真っ先に反応したのはエメルだ。俺は後方だけど、エメルにとっては真正面だからな。
「ディル! 待ったよー! もう、ディル以外は集まって軽く説明しながらマッタリお茶してたんだからな!」
「そうか、すまないな……、エメル以外」
「え!? 僕抜きなの!?」
「主にお前の武器のメンテの方に時間掛かってんだよ! ほら!」
そう言って更にエメルの傍に移動して、現れたディルさんはエメルの後方からゴトリと布に包まれた……銃を置いた。
そして俺は驚いたね。この登場した"ディル"さん、以前あの鍛冶屋に居た、あの涼しげな兄ちゃんじゃないか……!
そんなディルさんは銃を置いた後、座っている面々をぐるりと眺めてから再びエメルに話し掛けた。
「……何だ? 結構大人数じゃないか? エメル……。結構呼ぶとか言ってたけど、俺らも含めて六人か」
「うん、まぁねー」
エメルの返答にディルさんは俺とシュトールの方へ顔を向けてきた。
「アリエントにグリンフィートは分かるけど……。残りの二人は初めてだよな? じゃ、自己紹介が必要だな。
俺は"ディル"。魔法剣士だ。呼び方は気軽に"ディル"だけでお願いする」
「俺は"アサヒ"。一応、剣士だ。俺も"アサヒ"って気軽に呼んでくれると嬉しいな」
「俺は"シュトール"。魔法使い……かな。それと、俺は魔族だ。呼び捨てで構わない」
簡単な自己紹介をした後、ディルはエメルの空いた片側に腰を下ろした。
……って、ディルは"魔法剣士"! なら、剣は魔法に耐えられる物で……エメルと同じくハスマヒナ産なのか、天然物なのか……。気になる……。
俺がそんな事を考えているとは、当然だが全く知らないディルはエメルに話しかけ始めた。
「……それで? どこまで話したんだ? 続けてくれよ」
「うん、今回はねー、珍しく依頼主がこの後詳しく説明してくれる流れなんだ。ギルドを通してないヤツだから、ちょーっと危ないかもだけど! だから結構声掛けたんだ。あはは!」
「"あはは"じゃない……! まったく、お前と言うヤツは……簡単に決めやがって……」
「それに、僕が危ない時はディルが助けてくれるよなー?」
「まぁ……助ける……」
「うん、今回も言質はとった。安心安心♪」
何だ、エメルとディルはすごく仲が良さそうじゃないか?
エメルの言葉に、ディルは無意識か剣の鞘を少し撫でて存在を確かめる動きをしてるしな。エメル、大事にされてるんじゃないか?
「とにかく、海! 港町だね。"港町・シーフィールム"の近くにある海底洞窟にある資材採取が向こうの依頼なんだ。
その目的の海底洞窟は魔物とか蔓延ってるらしいから、本当、期待してるよ。君達で火力は十分だと思うからね」
「それで……何の資材なんだ?」
俺の質問にエメルは「えっと……」と思い出しながら喋り始めた。
「"琉榮の珠藻"って言う、藻、だよ」
「藻?」
「そう。海藻。何でも若返り的な美容効果が高い……らしいんだ」
「へぇ……?」
そんなのがあるんだなー。ってか、エメルは何でもありだな、何となく。
「……ま、そんな訳でこの集まりは主に顔合わせ、って訳なんだ。ただね、海方面だから、装備や準備はその事を踏まえてね。あ、水着があると便利かもねー」
そう言いながらエメルはぐるりと俺達を見回した。
俺も含めてそれぞれ「分かった」や、頷いたりしている。そんな俺達の反応にエメルも自然と頷いている。
「んじゃ、僕は最終確認の為に依頼主に会いに行くけど…………付いて来たい人!」
「はい!」
「……あれ? アサヒくんだけ?」
……って、俺だけかい!!
…………どうやら皆用事があるらしい。シュトールはリリサ先生の所に行くと教えてくれた。
最近シュトールはリリサ先生の所に通ってるな……。二人とも話が合いそうだし、もしかして共同で何かしているのか?
シュトールの出現で、リリサ先生の研究が進んでいる……のかもしれない。
俺はそんな事を考えながら、相変わらずタヌハチを肩車しているシュトールを見た。
シュトールはタヌハチが落ちないように両足首を掴んでいるけど、転げ落ちたところでローブの大きめなフードの中にタヌハチが落ちるだけだと思うのだが、とにかく掴んでいる。
まー、タヌハチもシュトールの頭にしがみ付いているんだけどな……。見てるとほのぼのしちまうな。
グリンフィートも最初よりは落ち着いたのか、エメルの話から今回の旅に必要そうな物を指折りで確認している様だ。
アリエントはエメルに「水着が必要、って事は潜るのか?」と質問していて、「それも有るかもしれないけど、海で遊べるだろー、アリエントくん!!」と勢い良く返答していている……。多分、遊ぶ方が目的の持ち物になるかもしれない……。
ディルはそんなエメルとアリエントのやりとりと静かに眺めている。
……このメンバーで行くのかぁ……。少し不思議な気分だ。でもなんと無く大丈夫そうな気がする。
うん、楽しみだ。
「―……じゃー、詳しい依頼内容の情報等は後でまとめて魔法符で送るから! 基本、出発は五日後、ギルドの前に早朝六時位に集合で……。では、かいさーん!」
そしてエメルの言葉にそれぞれが椅子から立ち上がり、今、机に座ってるのは俺とエメルとディルだけだ。
……俺は出来たらディルに魔法剣の事を聞きたいと思っているんだけどな。機会はあるかな?
「それじゃ、アサヒくん、一緒に行こうか」
そう言ってエメルは笑顔で立ち上がった。
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