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第148話 発進!カタツムリ商隊! -1-

「―……じゃ、オッチャン、行ってくるな。留守番ヨロシク」 「ミ☆!!」 ……遂にシーフィールムへの出発の朝を迎えた……。 わくわくして気分は高揚してるんだけど、その感情の隅っこの方で俺はかーちゃんに会って今日の事を報告出来なかったのが少し残念に思っている。 でもさ、かーちゃんは神出鬼没だから……。どこかで会った時に報告するつもりだ。ま、それが依頼が完了する前か後かは分からないけどな。 ……それがシーフィールムであったら、それはそれで嬉しい。 俺はオッチャンを撫で、ぎゅうぎゅうと抱いてからスリープ警戒モードに移行させてソファー上のクッションに紛れ込ませる様にオッチャンを置いた。 それから荷物を持ち、部屋を出て何気無くシュトールの部屋の方を見ると丁度ドアが開き、シュトールが出てきた。 そこで俺は軽くシュトールに「はよー、シュトール」と挨拶をすると、シュトールが寄って来て俺の目の前で「おはよう、アサヒ。今日から宜しくな」と緩く笑みを浮かべた。 くー! 将来が楽しみになる美人顔をしおってからに。けしからん。 「ん、よろしくー。シュトールぅ~」 「ぅわ!?」 そこで俺は少し屈んでシュトールを抱きしめ、頭上に顎を乗せてグリグリと愛でた。ちょっと魔力の影響でクラクラするけど、気にし無い。 うーん。こうした抱擁癖はオッチャンからの影響が濃そうだなー。 そしてシュトールは俺のこの突然の行為に、ゆっくりと背中に手を回して抱きつき返してきたんだ。うーん、可愛く可憐で華奢なヤツめー。 一方タヌハチはシュトールの足元から離れて、主人に習って俺の脚に抱きついてきた。うう~ん、賢いタヌキめー。愛い奴、愛いヤツー。 そんな感じで俺達は廊下で妙な抱擁を一時し合い、玄関ホールへ向かった。 「二人とも、おはよう。はい、お弁当。怪我に気をつけて、頑張ってね」 「おあよーぅ! はい、オベントぉ! 美味しーの~」 そして玄関ホールに向かえば、マキちゃんとネルが弁当を持って立っていた。 用意されてる弁当は二つ。シュトールも頼んでいたんだな。俺の隣りでネルから、「いってあっしゃい!」と言われながら受け取っている。 そんな感じで弁当を受け取っていたら、熊の左手からルツとハウルが出てきた。二人とも朝早いなー……って、ラフな格好で武器とか持って……って、朝練してたのかな? 俺が二人の方を見て、そんな判断をしていたらルツが俺の視線に気が付いた様でこっちに来てくれた。 「アサヒ、今からか」 「ん、そう。行ってきまーす」 「え? アサヒさん、どこか行くんですか?」 あ。そうか。俺、ハウルに言ってなかったか。 そこで俺は、ハウルにエメルの依頼でシーフィールムに行く旨を軽く説明した。 「……そうだったんですか。シーフィールムは体格の良い海の荒くれ者が多いと聞きますので、注意して下さい。……アサヒさん、実は余り筋肉が無さそうだから、少し心配です……」 「うん? 気を付けるな?でもなー、ハウル! 筋肉なら、俺だってそれなりに有るし! 何だよ~、ハウルー。この美筋肉野郎がぁー。うりうりッ!」 「は!? ……ちょ、ちょっと、アサヒさん腹を撫で回さないで下さいよ……!」 力を入れて無い状態でそれなりに割れてると感じる腹筋って……。ハウルの腹、服越しだが撫で回すの楽しいな! そんな感じでハウルにじゃれていたら、「こら」とルツに軽く頭を叩かれた。 俺はその事に「ん~? 何、ルツー」と返せば、ルツはちょっと呆れた感じで話し始めた。 「まぁ……アサヒ、気を付けてな。……あと、酒は勧められても控えた方がお前の為だ」 「ルツ、あんがと。嬉けど、ホント心配性だなー。……うん、でも分かった。なるべくそうする」 笑顔でルツに答えて、俺はシュトールと外に出た。 この宿の目の前はギルドだから、待ち合わせ場所は目と鼻の先……。 待ち合わせ場所に視線を向ければディルとグリンフィートとアリエントがすでに居て、それぞれ軽く挨拶をくれたから俺も同じノリで挨拶を返した。 そうして皆と合流したのは良いけどエメルの姿が見当たらない……。 疑問をディルに聞けば、エメルはこことは別な場所で荷物と一緒に待機中の様だ。最終確認とかしているのかな? 「……だから、今からエメルの居る場所に向かう。そこが出発地点だ」 「そっか。……ところでディル、その大きな袋は……何?」 「ああ、これか? これはリンデルさんからの薬草の差し入れだ」 おお? リンデルの薬草か。確かレンネルは「良く効くからお勧め!」って言ってたな。 それに俺も微力ながらリンデルの薬草作りを手伝った事があるから、リンデルの薬草の質の良さは分かる。 分かるけど……結構くれたな、リンデル。ディルの持っている袋、大袋じゃないかな? 「ま……そんな感じで有り難い薬草なんだ。必要な時は、良かったら適当に使ってくれな。じゃ、全員揃ったからエメルの所に行こうか」 ディルはそう言うと俺達を見回し、エメルの元へと歩き出した。 ああー……俺、ついに……この王都以外の人がたくさん集まっている場所に行くんだな……。しみじみ……。 みんなに囲まれながらの移動中に、俺は何だかシンミリとそんな事を考えていた。 また王都に帰ってくるってのにさ? ……ま、それがどの位先かは知らないけど、ものすごい長期では無いだろうし。 ちょっと気楽に構えておこう。うんうん、そん位が俺には丁度良い。

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