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第154話 治療とステップアップお勉強会 -2-

「エメルの説明で分かったと思うが、俺達までまだ時間がある。適当に食事や仮眠しとけよ、アサヒ」 「うん、分かった」 言いながらアリエントはすでに毛布を広げて、仮眠する気が窺えた。 「……じゃ、俺はとりあえず仮眠するから」 「仮眠か、アリエント。なら俺は少し周りを見て回って来ようかな?」 俺が予想していた通り、アリエントは"仮眠"に入る様だ。 俺は酒が効いて「ぐーすか」してたから、比較的元気だ。まぁ、まだ少しダルさはあるが、そのうちこれも引いて行くだろう。 そして俺は景色を楽しめなかった埋め合わせとして、コンテナ付近を散策して楽しもうと思い付いたんだ。 そこで俺は荷物から……まだ余っているネルのクッキー数枚を何となくハンカチに包んで懐に忍ばせた。 ネルのクッキーは大きいから、食べ応えもあるし、腹にも有る程度溜まるだろうと予想したからだ。それに疲れた時は甘い物補給だ! 「分かっていると思うが、気を付けろよ?」 「りょうかーい。んでは、行ってくる」 アリエントからの声を後方から受け、俺は答えながらそちらを振り返らずに前方を見たまま外へ出た。 少し高い位置にあるコンテナの搭乗口からは、地面へと行き来が楽に出来る様に板が延びていたから、俺はそれを降りて地面に立った。 辺りを見て空を仰げば、先程エメルの呼び掛けで外に出た時より数段夜の気配が濃くなっていた。結構、早いもんだなー。 そして空から再び下に視線を戻せば、シュトールにグリンフィートの姿が。二人は自分達の乗っていたコンテナの前で、どうやら雑談してる様だった。 もう俺が二人を心配する必要無い感じだな。タヌハチは相変わらずシュトールに肩車されて、こちらは辺りをキョロキョロと見て、鼻をフンフンしてる。 「……夜に、差し掛かるんだな……。もうそんな時間か……」 俺は目に見えてグラデーションを作り次第に暗くなってきた空を見上げて、独り言を漏らした。 それから振り返って後方のコンテナを見ると、確かにエメルが話してくれた通りに管が出ており、その先端が丸い発光体が備わってた。さっきまで無かったのに……。 これは確かに……カタツムリ……。想像通りの姿だ。 そして俺はシュトールとグリンフィートに「ちょっと適当に散策してくる」と言ってから、目の前の森へ足を踏み入れた。 ……まぁ、二人に断りと入れたら、グリンフィートからは「迷子になるなよ」と……。シュトールには「はしゃぎ過ぎるな」と変に釘を刺されたのは、俺だけの内緒話だ! 全く! グリンフィートの「迷子になるなよ」は方向感覚は洞窟住まいの元スライムの勘で多分大丈夫だけど、シュトールからの「はしゃぎ過ぎるな」とは……!? ………………でも、そうだな。うん……注意しておこう……。 そして、シュトールからは光魔法で小さな光の球をプレゼントされた。ライト代わりに丁度良い。 俺が「光魔法、使えるんだなー」とか言ったら、「一応な。闇属性の方が得意だが、この位の物なら出来る」と返されてしまった。なるほど。 ま、そんなこんなで散策だ。さんさくー! 「―……お、おお……っ?」 こう、何だ? 夜の森に立っていると……"昆虫採集"を思い出しちまうな。まぁ……前世の記憶、だけどな? 夏休みに家族旅行とか行った先でさ、夜……深夜に外を歩けば街頭や道端、森や林……などに様々な昆虫が集まっていたり転がっていたり飛んでたり……。 高速のサービスエリアとかも歩き回った事が前世ではあるが、子供の頃の記憶がポコポコと蘇ってくる。 そして俺はチラと少し離れた草むらの所に生えている木を見て、無性に蹴りたくなった。虫が落ちてくるとは限らない。ただ、行為を楽しみたくなったんだ。 少し草を分けて進んだ先にある適当な木の前に立ち、俺は片足を上げて木を蹴った。 「―…………よっ!」 ―ドン!! 「わ!?」 「……"わ"……?」 ……何だ、今の"声"らしきものは……。 俺はそこで、好奇心が湧いて思い付いた勢いのまま、反対側の部分を覗き見た。そしたらさぁ…… 「……ぁ……」 「……………………」 ―……昆虫ではなく、魔物の子供を見つけちゃいました!? 見た感じ年は十五歳程度で、薄い灰色の瞳に黒い髪、肌は濃い目の灰褐色……。額や頭から何本か角が生えている様だ……けど、魔族? 鬼族? 肌の色や角から、人間族では無いのが分かる。 そんなチビッコ小鬼が草むらの中から、俺を驚いた様に見上げている。彼の時が止ってしまっている……。 しかも、その下には……短剣と、まだ息のあるウサギカエル? …………もしや、狩りの途中……? そして驚いた彼の手が緩んだ隙間をウサギカエルは器用にそこから這い出し、高く飛び跳ねながら逃げて行ってしまった……。

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