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第159話 俺的には"デカイ・モフモフ・ツヤツヤ"。 -1-

「ブラック・モフモージャ・ストロングホーン?」 「うん。アリエントは知ってる?」 俺の突然の質問にアリエントは「おー、知ってるぞー」と間延びした声で答え、手近な小石を拾うとゴリゴリと地面に絵を描き出した。 「これだ」 「……手抜き、してない?」 「してねーよ! 失礼な奴だな!」 だってさー? 描き上げられた絵はトゥより簡略化されているってか……。黒い雲みたいなモジャモジャの上に五つの三角……多分、角。そして下には四本に短い棒……。うん、分かるよ、アリエント。ソコの部分が脚なんだよな? うん。 「そして、大きさはこの位だ」 言いながらアリエントは黒モジャの脇に縦の楕円をクルリと描いた。 この縦の楕円を"一"としたら、黒いモジャモジャは単純に見て"二"ある。つまり、倍の高さなのか……。 そして身体は巨大で、出遭ったら確実に面倒臭そうだ。 「でかいな」 「ああ、でかいな」 俺はアリエントが描いてくれた絵を見てそんな感想を零した。 アリエントはそんな俺に相槌をしながら、すでに別な作業に移っている。 そんな俺達の間を、冷たさを含んだ夜風が肌を撫でて行った。 "サワリ……"と産毛を撫でる様に通り過ぎた風に、俺は感覚部分をピンポイントでやられたらしく、一気にゾワゾワとした寒気が全身を包んできた。 「……アリエントー、寒い~。さむー!」 「んー? でも見張りは外でしないとな……」 「わ、分かってるよ」 アリエントの台詞はとても最もだが、俺は「案外冷えるな~」と感想を更に零した。 するとアリエントが「まぁ、なぁ? ……なら、こうするか?」と、半分ふざけてマントの前面を広げて俺を中に招き入れた。 おおっ? これは……! 「へへ~……。ぬっくいな!」 「……そうか。それは良かったな、アサヒ」 「おう、マントに入れてくれてありがとな、アリント~」 俺はアリントに身を寄せながら、彼に笑顔を向けた。 はー……。アリエントってば、獣人だからかな? 体温が他の人より高い気がする。 あ。それとも、俺が体温が低過ぎる? 確かルツに前に「体温が低い」って言われたっけ? 俺がお礼を言って、アリエントの腰に抱き付く様に腕を回せば、アリエントも俺と同じ様に腕を回して来てくれた。 「……ああ、別に……ほら、もう少しこっちに寄れよ」 「うん」 アリエント、腰……細ぇな。しなやかそうに感じる身体つき……撫でたら、すげぇ気持ち良さそう。 この、見張りで外に居るのは俺達だけで、何だか絶妙な"イイ"雰囲気。 俺が近づくのを、アリエントは少しづつ許してくれている。 今だって、アリエントは俺が更に近づく方向の言葉をくれた。 少し上から俺の瞳を真っ直ぐに覗くアリントに、俺は好意を持って目元を緩めた。 「アリエントは、俺とどうしたい?」……とはっきりと言って……聞いてしまえば、"何か"がはっきりと分かるかもしれない。   だけど、俺はわざと曖昧さを残して答えを求めなかった。 アリエントに言われて無言で素直に"ススス……スリスリ……"と身を寄せたところで、突然大きな音が響いた。 ―……ドゴォオオオォォォン!……メキャ……メキャメキャメキャ…… 「…………何だ!?」 「……木に何かが衝突たのか? ……案外、近そうだな……」 俺の大声に対して、アリエントは逆に静かな声をで感想を述べた。 "ぎゅ"っと俺を引き寄せてくれて、瞳に警戒を宿らせて音のした方向を見ている。 アリエントは俺より背が高いから、何か見えたかもしれない。 そんな期待を込めて、「何か分かった?」と聞いたら、「いいや……流石に暗い」と返されてしまった。 ……ならさ……、 「……俺、ちょっと見てくる!」 「アサヒ!?」 「アリエントはコンテナを頼むな!」 何だろうな? 俺は音の原因が、"何なのか"自分の目で知りたくなったんだ。 アリエントを残して俺は音のした方へ走りながら、光魔法で明かりとなる光球を作った。

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