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第160話 俺的には"デカイ・モフモフ・ツヤツヤ"。 -2-
……ここら辺……だと思ったんだが……。
あの音から大した時間は経っていない筈だから、何かが分かると思ったんだけど……。
いざ、目標とした場所に来て見れば、そこは他と大差無い木々の乱立が窺える場所だった。
正直言って表し抜けた……。
結構派手な音だったと思うんだけどなァ?
「……まぁ、何も変化が無さそう……ってのは、良い事……だよ、な?」
……うんうん。そうに違い無い。危険そうな事が無いのが一番。
この行き着いた場所があの音がした場所では無いとも考えられるし、あまり深追いは止めよう。
わざわざ安全な場所から、危険な場所を求めなくても良いじゃないか。
俺はそう自分を納得させて、辺りを見渡すのを止めてアリエント達の所に戻ろうと決めた。
しかし、そこの時……
―ドガッ! ガサガサガサ!!
「!?」
今度は頭上の木に何かが……?
俺は反射的に持っていた光球で、音のした問題の場所を照らしてみた。すると……
「……ぃててて……ッ」
「―……トゥ!?」
枝葉の中に器用に尻餅をつく様に居た人物は、あの……トゥ、だった。
「ンぉ? ああ、アサヒ……」
「な、何やってんだよ……、トゥ? しかもまた怪我を……」
「ああ、今の俺は敵……獲物と交戦中! アサヒに治してもらったから、直ぐに闘う出来た!」
「は……? ……って、トゥ! 俺は……」
「分かってる、アサヒ。俺だって怪我するのは好きじゃない……。けど、負けっぱなしはもっと好きじゃない!」
そう叫んでトゥは「降りる」と断りを入れてから俺の目の前に、木の上から飛び降りてきた。
危なげも無く、俺の前にしゃがんだ着地の態勢で降りてきたトゥ。……基本、身体能力はとても高いんだな。
そしてしゃがんだ体勢から立ち上がって、俺はある違和感を覚えた。
「……視線が……同じ?」
そう。立ち上がったトゥと、俺の視線は同じ位なのだ。それに全体を見れば……育ってる? 顔も身体つきも出合った時の少年らしいものから、大人な雰囲気が混じってる感じがする。
「…………お前、本当にトゥか?」
「俺は本物のトゥだよ、アサヒ」
俺の疑るような視線と質問に、トゥ……は"当然"といった風で受け答えをし、「ああ……」と声出して再び口を開いた。
「俺の部族はな、アサヒ、"大人になる儀式"……、まぁ、"成人の儀"がある訳だが、それに可能な年齢になると、儀式が終わるまで身体の年齢が固定されないである程度行き来するんだ」
「だから……? その姿、なのか?」
「そうだよ。今の俺は……18歳位か? まぁ、最低年齢は15歳位の身体になるがな。その時にアサヒと遇ったから、今の俺に違和感があるのはしょうがない」
そう言って、トゥは「ウンウン」と一人で頷きを繰り返している。
「それにな、俺はある条件もちゃんと満たしてるから、儀式で成人になるのが楽しみ」
「ある条件?」
「あの、白く粘つく液体、あれ出たら、族長に話す。そして、儀式を受ける時機と順番を待つ!」
「……!?」
「あの液体、準備が出来たという、"男の証"……」
「へ、へえ?」
「……あの液体が出せる身体になるのも大事だが、もう一つ大事な事がある! 俺はそれを探すのも兼ねた旅をしているんだ。
実は、そっちの方が見つけるのが大変。俺もなかなか"これ"というのに出逢えずに、こうして修行の旅をしている始末だ……」
「大変……だな?」
「ああ、大変だ。でも、時間が掛かろうとも……それをいい加減にしたく無い……」
段々消え入る声で俺に答えたトゥ……。何を探しているかは分からないが、どうやら"トゥ自身が気に入る"のが大事の様だ。
頬が僅かに赤く色付き、普段より上気させていると分かる。どこか夢に飛んでいる様なトゥ。
そんなトゥは何で空から……、何かに吹っ飛ばされる様に木に俺の前に現れたんだ?
「……なぁ、トゥ……。何で……木に引っ掛かる様な事に……?」
「ん!? ああ、それはな、アサヒ……ちょっと一緒に来る!」
そう言ってトゥは言葉ではなく、現物を俺に見せるのを回答としてきた。
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