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第161話 俺的には"デカイ・モフモフ・ツヤツヤ"。 -3-

そして連れて行かれた先に"居た"ものは……。 「でけ……ぇ…………!?」 「だろ? これは燃えるだろ? な? な?」 トゥの狩猟本能を刺激し捲くりな本日の獲物は……。 ブラック・モフモージャ・ストロングホーン、だった。 「ま、予想してたけどな……」 「ん? 何か言ったか、アサヒ?」 「いや、何でもない」 現物はこんな感じなのか……。これはアリエントのあの絵は……アリ、だな。うん。 闇の中でも分かる艶やかな黒い長毛。特徴的な五本の鋭い角。あれに突き上げられたら、即串刺しだな。 そんなブラック・モフモージャ・ストロングホーンが、当たりを警戒するようにうろつきながら…… 「二頭……」 「そうなんだ。珍しく単体行動してないんだ……。親離れしたばかりの兄弟か、何かだと思う」 「え!? 親離れしたばかり……って……」 「ああ。これでもまだ完璧な大人サイズじゃない」 これでまだ成長するのかよ!? 俺は「マジ……かよ……」と思わ呟きが零れた。 そして良く見ると、二頭とも度合いは違うが負傷してる様だった。 この負傷は……もしかいてトゥが負わせたものなのだろうか? 「……さて、戦闘の続き、する……!」 そして警戒と驚く俺をその場に残して、輝く笑顔を作っているトゥは隠れていた茂みから飛び出していってしまった。 武器……トゥの武器って、あのウサギカエルに突きつけナイフをしか思い出せない。 しかし、ブラック・モフモージャ・ストロングホーン に着いている傷はナイフからの物では無いのだ。明らかに深さが違う。 どういう事だと思いながらトゥと見てみれば、彼の両手から薄黄色い"何か"が長く出てきた。 そんなトゥの手を認めた時、俺の中にある情報が浮上してきた。 【オーラウェポン / 限定的特殊武器】 体内に宿る"気"や"魔力"、"生命マナ"等を一時的に特殊硬化させた武器。 武器の強さや形は発動者に依存。使用中に変形も有る程度可能。本人の属性を纏う事が可能。 これは、上位亜人種、上位精霊(一部妖精)族、神属種等が習得可能な特殊武器である。 ……どうやら武器の情報らしい……。俺の生体データの何かが発動した様だ。鑑定士か何かのスキルなのだろうか? そしてトゥの能力も垣間見れた。 更に大まかだが、種族情報も……。 そんな飛び出して行ったトゥに視線を合わせれば、巨体の魔物二頭を同時に相手するには、まだやはりどこか無理が生じてそうだった。 「……よし……それなら……」 俺は独り言を口にしてから、トゥと共闘すべく茂みからブラック・モフモージャ・ストロングホーンの方へ駆け出した。 トゥに近寄りながら「俺も戦う……!」とトゥに宣言して、ブラック・モフモージャ・ストロングホーンの一頭に光の球を当てた。 光球はヤツの眉間に当たって輝きを発して更に小破しながら霧散し、トゥから俺に意識を向けてきた。 一瞬、「グギュッ……」と呻いてから、攻撃した俺に身体を向け直して怒りにヒズメで地に大きく傷を作ると、弾かれた黒い弾丸となって俺の方へ一気に駆けてきた。 「……アサヒ……!?」 「トゥ、一頭は任せろよ!?」 俺はトゥの返事を待たないで、トゥから一頭の引き剥がしに成功した事に思わず口角を上げてしまった。 ……さて、単純な力比べでは負けそうだし、剣で斬るにしては身体が厚過ぎて俺のでは無理だろう。 「……ちょっと、呼び覚まそうかな……」 ……そう、スタン魔法で動きを封じてから、心臓へ一点集中の重い雷撃で一気に動けなくしてやる! 戦闘の方針が決まれば、後はそれをこなすだけだ。 俺は脳内で決定した事項を即行で遂行すべく、自分の中にあるであろう"スタン魔法"を呼び出した。 そう……俺の中に取り込まれている魔術師達のスキルの中から、スタン……痺れ効果の魔法を取り出せば良いんだ。 広げた五指に俺が望んだ魔法が呼び出されてくる。手の平が熱くなってきた。 ちなみに俺は魔法を使うのに、"詠唱"は要らない。魔法の威力も自由自在だ。 魔力も十分、俺の中に貯蓄されているし、俺が望む魔法を使用するのに何も不安は無い。単純に打ち込むだけだ。 ただ、今は真夜中だからさ? みんなを起こす訳にはいかないんだ。それに、アリエントをあまり待たせる訳にもいかないしな。 そして俺はスルリと髪の一部を、スライム触手化させた。ただしコイツは髪の水色より薄く、透明に近いものだ。 ここで、俺のスライム能力を活かそうと思う。 「……ここ、だな?」 スライムの触手を獣毛に滑り込ませて俺は魔獣使い関係の知識から、ブラック・モフモージャ・ストロングホーンの心臓部を探り当てた。 そして伸ばしたスライム触手を"プツリ"と肉体へと深々と侵入させ、そこに留めの…… 「はい、おやすみ。南無南無……ズドーン?」 ―……ビ! ビビビ……ビッ!!! 「……ぎゅげッ!? ……ひゃぐッ!!??? …………ぐ、ぐ……ぎゃ、ぁ、あ…………―――」 心臓へ一点集中、威力大の雷撃。 おーおー、身体から青白いスパークが……。内部破壊が起きた事で盛大に巨躯を一度跳ねさせ、泡を吹いて仰向けに倒れてしまった。 そして黒く細い煙と同時に辺りに僅かに漂い始めた、美味そうな肉の匂い……。後半の感想はちょっと不謹慎かもしれないが……。

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