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第162話 俺的には"デカイ・モフモフ・ツヤツヤ"。 -4-

俺の確実な連続攻撃でアッサリとその身を横たえた、ブラック・モフモージャ・ストロングホーン。 特に目立った外傷は無い。と、言うか、俺はそれも狙ってコイツを仕留めたんだ。 えっと、ナンだ? トゥの話だと、コイツの肉は美味で高価、毛皮も高値で取引されているって話じゃないか。 だからさ、商品に変えるべく成るべく傷が付かない形を……と思ったんだよ、俺は。 「アサヒ、強いんだな!」 「トゥ!?」 倒した一匹を眺めていたら、トゥがヒョッコリと俺の横に現れた。 「俺も負けてられない!!」 そしてそんな言葉を俺に"ビシッ!"と向けると、トゥは残る獲物へ駆け出した。 「アサヒのお陰で集中し易くなった!」 走りながらそう俺に話し掛け、一瞬で倒された片割れに動揺しているブラック・モフモージャ・ストロングホーンに意識を向け…… 「お前も、もう、眠っとけ!」 ―ザキュっ……!!! 「へぎッ!?」 両手に二本の剣状を一本の大剣状態にした物で、ブラック・モフモージャ・ストロングホーンの頭と身体を軽々と分断したのだった……。 「…………価値が下がるから、スピード重視のこのやり方は控えてたんだが……しょうがないな。これ以上、お前に構ってる時間が惜しくなった 。 …………アサヒを見つけたお陰で、俺の成人の儀に必要な人探しの"路銀"稼ぎはお前で……終わり、だ」 …………トゥが何か喋っている……? 俺からはトゥまでの距離が少しあるから、小声な今の台詞が何を言ったか分からないが、どうやら戦闘は終わった様だ。 そしてトゥは武器を霧散させると、分断した獲物をそのままに"クルリ"と背を向けて、俺の元に無邪気そうな全開笑顔で駆け寄って来た。 「アサヒ……見つけた。俺が探していたのは、"アサヒ"だ……!!」 「は? 俺? え? 何?」 「……俺は……決めたぞ!」 そしてそう叫ぶと、トゥは俺を勢い良く引き寄せて唇を重ねてきた。 最初、引き寄せられた衝撃で僅かに唇がずれたが、直ぐに柔らかなものがぎこちなく俺に押し当てられた。 「アサヒ……、ん、んちゅ……ちゅ……」 「ン!? ん、ん……ちゅ……、ちゅ…………」 啄ばむのと貪られるのが混ざった口付けをされて、俺は不思議とトゥのその懸命さに答える為に好きにさせ、全てに受身でいた。 俺に抱きついてそうしてるトゥの下半身が……僅かに育ってきていると感じたが、俺はそこには触れずに彼の腰に手を回して俺からも引き寄せて好意を示した。 服越しにお互いのペニスが当たり、ジワジワと熱が宿ってきているのを感じたが、俺達は唇だけを重ね続けた。 どこか幼さの色が窺える口付けをしてくる唇の柔らかさに対して、下半身で服越しに擦れるペニス同士が熱くて硬く、トゥのと一緒に自身を弄ってみたいと俺を刺激して煽って来る。 そんな煽りに近いものを受けながら、俺は結局そこには触れずにトゥとの柔らかく幼い口付けを優先させた。 何だか……トゥとそんな口付けをし合って何かが……ほんのりと満たされていくのが、お互いに良いと……思ったんだ。 そして幾度目かの口付け行為の後、やっとトゥの唇が離れたと思ったら、熱を帯びた顔でトゥが俺に縋ってきた。 「アサヒ、俺の初めての口付け……、アサヒに……あげた」 「……トゥ……? 何で……」 「強いアサヒ、格好良かった……。俺、アサヒに決めた。……大人になる……"成人の儀式"の最後を最高のかたちで完了する為に、儀式が始まったらアサヒに絶対に会いに行く!」 「?????」 俺が……必要、なのか? …………絶対? 「俺の事、忘れないでな?」 トゥの言葉と行動に、俺は頷く行為で彼に答えた。 そして頷いた俺に満足したのか、トゥは再び俺の唇に軽く重ね微笑むと「絶対、約束」と耳元で一言呟くと俺から離れた。 俺は微笑んだトゥの中に、不思議と僅かに大人の色香が混じっている気がして、頷きながら今更に熱が頬に浮かんでいくのを感じた。 そしてその場に俺を置き去りにして、「血抜きは確りしろよー!」と言って自分で狩り終えたブラック・モフモージャ・ストロングホーンの頭部と身体を易々と引き摺って闇に消えてしまった……。 「……何だ? トゥの方が力が有るんじゃないのか……?」 俺は下半身の微妙な疼きをそのままに、変に高鳴る気持ちで感情の制御を半分以上トゥに持っていかれ、自分を誤魔化す様にそんな事を口にした。

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