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第167話 月に愛でられる者 -4-
「……さ、これで大丈夫ですね。
それでアサヒ、どうして王都ではなく、この街に居るのですか?」
「ああ、それはね、カーちゃん……」
俺は多少長くなると断りを一応入れてから、カーちゃんに色々抓んで説明を始めた。
シュトールとポンコ達の事、エメルからの依頼、シャア・アルからの提案……。
そして初めて新月を迎えた時の話し。スイとの出会いと、藻取りの繋がり。
順番や説明が上手く出来たか……。正直、自信が余り無いけど、カーちゃんは俺のそんな拙い説明を聞いてくれた。
「……色々あったのですね、アサヒ」
「うん、カーちゃん」
そして俺の頭を撫でてくれる。
ナデナデされながら、瞳の端に掠めた光りの柱……。気になるから、カーちゃんに聞いてみようかな。
「それでさ……、あの光りの柱の輝蝶はカーちゃんが……作ったモノ?」
「……そこは正しくは私の管轄外ですね……。死者の国、の場所ですから。この世界の"死"の神が創ったのでしょう」
「?」
カーちゃんの答えに俺は「?」がいっぱいだ。
俺が突然聞いた事に対して、カーちゃんは言いながら視線を向こうへ動かした。釣られて俺もそちらを向く。
「三神の私達はこの世界の最上位に位置します。まぁ、そこにはまた序列が存在しますが、ここは省きます。
……話しは戻りますが、三神から発生した"神"……私の中に、死者の国の最高神が出てきます」
「……つまり、カーちゃん……の、下の位置に存在する神様?」
「そうです。彼等はそれぞれ別々なシステムで統治していますから、"輝蝶"は死者の国が管理しているのです」
「そっかぁ……」
「"許され"ながらも現世に未練が多い魂は、輝蝶に姿を変え、その自分の魂を慰める為に知人等を巡り、やがてあの光の柱から幽界に帰るのです」
ん―……?んじゃ、ヒョウモ兄さんが言っていた「連れて行く」というのは……?
…………ちょっと、暗い想像をしちまうな!突然現れた故人の"蝶"を、追い過ぎて後追い……とか?あわわ……ぼやかしとこう。うむ……!
「それに、あの光に入ってもアサヒは何も影響を受けませんよ」
「まぁ……俺、ある意味、生まれたてだから? "知り合い"は皆生きてるし……」
「そうですね。でも……もし、誰かがアサヒを連れ行こうとしても、私が一番……許しませんから」
「ふぇッ!?」
「ふふふ……」
うわ?うわッ??カーちゃんの台詞に頬が熱くなってくるのに、背筋が寒いんですけど!?
「そしてですね、アサヒが居た場所は"昏冥の洞窟宮"と呼ばれる、死者の国に通ずるとされる中でも最大級の場所ですよ」
「へ?」
「まぁ、あそこは他に比べて上位のモンスターの巣窟と化していますから、冒険者達は意中の死者達に会うより強力な霊体のモンスター狩りが目的みたいですが……ね」
「そうなんだ……。でも、何で上位種が多いのかな?」
「……上位種が蔓延っていると言う事は、最奥には彼等の王、"神"が存在していると言う事です。
つまり、上位種達は門番的存在と言えるでしょう」
「!?」
「そして、上位種の他に神の力に惹き寄せられた一般的な死者や魔物もまた、多いのです」
何だ? 結構な危険地帯だったんじゃないか、俺の元棲みかってば! やーだー!
雪だるま式に惹かれ合っている様を想像しちまった。むむむむむ……!
「……"輝蝶"関連の話しはここまでです。さぁ、アサヒ。加護をあげましょう」
「カーちゃん……」
ここからは"加護"の時間……。
「アサヒ、こちらへ……」
「カーちゃ……ん……」
俺はそう言って両手を握ってきたカーちゃんを……、
そのまま押し倒した。
「……アサヒにならこうして押し倒されるのも、アリですかね?ふふふっ……」
俺の真下で艶然と微笑むカーちゃん……マジで美人。
そんなカーちゃんを見て、俺は勝手に喉が鳴った。
カーちゃんに枯渇している俺は正直、微笑み一つで一気に滾った。
……もー、我慢出来ない! 我慢出来ない! 我慢出来ない!
………………神様相手だけど……我慢、しない!!!
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