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第8話 初陣・トロール討伐! ぼかぁ、頑張りますよ!

※注意※  今回出てくる『夜光石( ルミナスストーン)』は人工で作られる石ですが、あえて使いました。 ゆるファンタジーなので、笑って許して頂けると助かります。 ++++++++++++++++++++ 今、俺達はトロールのねぐらの一角にある大岩に身を潜めている。 件のトロールは大鍋に謎の液体……見た目シチューめいたものをクルクルと匙でかき混ぜながら、気分が良いのか歌っていた……。 うえーこの音階は覚えたくない……。誰か、ミュートを! ミュートボタンはどこですかぁッ?! ……そしてパッと見、宝石達は無いが、俺は知ってる。 スライムの時、奴のコレクションを密かに見に行ったからね。 隠し扉があるんだ。とある岩を押すと、扉が出てくる仕組みだ。 トロールを倒した後、いかに怪しまれずにその岩を押すかが、俺の密かな問題なのだ。 「……よし、行くぞ、アサヒ……」 「ルツ?」 俺が悩んでいるうちに、ルツはトロールに向かっていく事を決めたみたいだ。 「まずあの明かりを消すから、お前は奴の後ろで待機しててくれ。俺が奴を主に引き付けて相手をするから、アサヒはサポート宜しくな?」 「うん、分かった」 「じゃぁ、暗闇でも見える様にするから……目、閉じてくれ」 そう言うとルツは瞳を閉じた俺に瞼の上から、多分そういう魔法を使ったんだと思う。 ルツ自身も同じ魔法をして、準備は整った。 そしてルツはショートボウをランプの中で揺らめく剥き身の炎に照準を合わせて射た。 上手い具合にルツの放った矢は部屋の明かりを消した。闇が辺りを支配する。 ……そうそう、一応ルツに俺はとりあえず武器はいらない、と伝えておいたんだ。 多分、体術で何とかなんだろ、と踏んだから……。 さて、トロール討伐に集中集中……っと……。 「ア"!?」 突然明かりが消えた事でトロールは虚をつかれて僅かに動揺を見せた。 その姿を確認して、俺達は行動を開始する事にしたんだ。 ルツにかけてもらった魔法のおかげで、俺は難なく脚を進められた。 そして俺達が身を潜めていた大岩から数歩、音も無く進んだその時、足元が急に淡く光り出した。 「……!?」 今度は俺達が動揺した。 そんな俺達の姿を確認したのか、トロールが緩慢に身体を揺すりながら近づいてきた。 「そごが……」 その手には、先ほどの匙では無く、大きな棍棒が握られていた。 所々黒く変色しているそれの理由を、俺は考えたくなかった……。 「あ"ぁ……アビの言う通り"夜光石"を置いておいでよがっだ……」 濁声を発しながらトロールはジワジワと距離を縮めてくる。 俺達はトロールの声にそれぞれ身構えた。 ん? ちょっと待て……"アビ"? 誰だ、ソイツは……。 ……道理でおかしいと思っていたんだ……。 こんな脳筋な奴が、"商隊だけ"を襲うなんてな! 多分、アビって奴がコイツに指示してたんだ。 「……さて、今日は、でぇじな客が来るがらいぞがじいんだ。 部屋もよごじだぐないじ、どぐべづ見逃してやるがらざっざど帰れ……」 そんな事を言いながら、トロールは明かりを点けた。 ……意外な提案だった……。 でもなー世の中はそう上手くは作られてねーんだわ。 「……そんなんで、"ハイソウデスカー"、って帰る訳ねぇだろ! ブォケがぁ!! この脳筋音痴!!!」 ドンガラガッシャーン!! 「あぢいいいいぃぃぃいいいいぃい!!!!!!!!」 俺はちゃぶ台返しよろしく、奴の大鍋を思いっきりトロール目掛けてひっくり返してやった。 もう、ここまできたら作戦とか何だか意味なさそうなので、俺は思い切って行動に出たんだ。 そんな俺にルツも、「よし!」とか声を掛けてきたから、多分大丈夫だろう。 「ご、ごンのぉ~~~!!!」 自分の作ったシチューを必死に身体から除きながら。トロールは怒りを露にしてきた。 そんなトロールへルツがすかさずが剣げきを入れた。 しかしトロールはそんなルツの攻撃を棍棒で跳ね除け、返しの一撃を食らわせようと勢い良く棍棒を振ってきた。 ルツはもちろんそれを軽く避けたけど、自分の攻撃の威力に少し驚いた様だった。 何度かトロールへ攻撃するも、踏み込みが甘いのか、軸がぶれるのか上手くいかず、ルツは舌打ちをして俺の元まで後退して来た。 少し息が上がっているルツに俺は声を掛けた。 「ルツ、調子が悪いのか?」 「……身体が思うように動かない……!」 「あ……何だかそれは俺のせいな気がする……!」 そんなとっさの俺の言葉に、ルツの頬がサッと僅かに赤くなった。 ……あ、ああ、思い出したんだね……。 「ば、ばかやろぉ!」 俺の視線にルツは更に紅潮した。……可愛い。って、討伐に集中! そしてルツは思い通りにいかない剣は止めて、素早くショートボウに矢を番えるとトロールの棍棒を握っている手に矢を射ていた。 何本か連射しているうちの数本が手の甲に刺さり、トロールは痛みに棍棒を落としたみたいだった。 「んじゃ、俺、行ってくるね」 「アサヒ!?」 後方からルツの声が聞こえたけど、俺は振り返らないでトロールの落とした棍棒へと走った。 その間にも、ルツはサポートで後方から矢を射てくれている。 トロールはルツの攻撃にその場から動けないでいる様だった。 そして俺は落ちている棍棒を手にし、奴の曲げている右膝を利用して飛び跳ねて、トロールの脳天目掛けて思いっきり振り下ろしてやった。 「あら、よっとォ!!」 ゴスッ!!、と鈍い音がして、トロールの頭が半分無くなった。 俺は棍棒を振り下ろしたままの力を利用して着地し、その場に立ち上がった。 そこに俺を追いかける様に、上から奴の血が降り注いできた。 下を向いていると奴が前方に居る俺を捕まえようとしている気配を感じて、俺は軽く棍棒で奴の腹を押してやった。 バランスを崩した奴は、後ろにたたらを踏んだ。 「みぎゅえぇぇぇぇっぇええええ?!!!!!」 そして訳の分からない言葉を残して、頭が半壊したトロールは後方にぶっ倒れた。 なんだ、それ。 あ~あ……俺は自分のその行動で、こうも全身に奴の血を浴びる事になるとは……。 うぇ、後で泉行きだな~……。 チラリとトロールを見やれば、僅かに四肢を動かしていた。 「ふん……!」 そしてそこで俺は更に倒れた奴目掛けて、アイツの棍棒を投げた。 その棍棒は"ドフッ"という音と共に奴の腹に刺さり、トロールの身体が一回大きく痙攣を起こした後、奴は動かなくなった。 お前が散々人を殺していた棍棒でやられるなんて、ざまねえわな。 ……さて、トロール討伐、完了ー! かんりょ―――! 「ルツー終わったよー!」 「あ、ああ……」 トロールの血を全身に浴びた格好で、俺は満面の笑みを作りルツに話しかけた。 「血だらけだな……」 「うん、後で泉で落とそうと思う」 「そうだな。さ、こいつがさっき言っていた"客"が来る前に、早くここを出よう。 さて、討伐した証拠になる物は何が良いかな……」 「ああ、分かった。……討伐の証拠は奴が奪っていた宝石で良いんじゃないか?」 「そうだな……。でも、宝石が何処にあるんだか……」 「…………」 ああーどうしようかなー俺、知ってんだよなー。 まぁ、後は"アビ"って奴が気に成るけど、これ以上ここに居ても無意味そうだし、"客"が来てもやっかいそうだ……。 「何だ、こいつ、ペンダントなんか着けてたのか……」 「……?」 ルツの言葉に俺はルツの言ったペンダントを見た。 ペンダントには、黒い石がトップに使われていて、とてもシンプルな作りをしていた。 ……ゾワリ、と足元からこみ上げる恐怖に俺は素早くペンダントを掴みかけていたルツの手を握った。 「アサヒ?」 「ルツ、それに触るな……取り込まれるぞ……!」 これは、厄介な……。 俺の中の能力が、このトップの宝石は危険だと知らせてくるんだ……。 この、"オブシディアン"は、呪われてる……。

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