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第17話 月夜の二人 -1-

小熊の尻尾亭に入ると、ルツが旅支度でライラさんから弁当らしき物を受け取っていた。 何か言葉を交わした後、ルツはライラさんに肩をバーンと叩かれていた。 まぁ、ふざけているのは傍目でも分かった。 「ルツ、どうしたの? その格好……」 「ああ、俺指名でギルドに依頼が来ててな。もう出るんだ」 指名? 指名とかされるの!? すげぇ! ルツかっけぇなー! 「ルツ、いってらっしゃい」 「おう、行って来る」 ゆるく手を振ってルツに声を掛けると、手を上げて答えてくれた。 はー、ルツも大変だなぁ。 夜道を進む事になるんだろうし……。 あ。でも、レイに乗って移動だろうから、実はそんなに危なくないのかな? 夜空を飛ぶのってどんな感覚なのかな? やっぱり、明るい時とは感覚が違くなるのかな……? ちょっと気に成る……。 そんな事を考えていたらルツと入れ違いでハウルが宿に入ってきた。 ……そうだ! ハウルが良いなら、今日はハウルと夕飯にしよう! 「ハウル~!」 「アサヒさん、どうも」 ハウルは俺の呼びかけに甲冑姿のまま俺のところまで来てくれた。 ガチャガチャと結構な重量がありそうだけど、ハウルは平気な顔だ。やっぱり普段から鍛えてんだろうな。 俺はそんなハウルを僅かに見上げながら夕飯に誘ってみたんだ。 「ハウルはメシ、もう食ったか?」 「いいえ、今からですよ」 「じゃ、じゃあさ、俺とメシ食いに行かねぇ?」 「良いですね、行きましょうか」 そしてハウルはさすがに甲冑は脱いでくると一旦部屋に戻って行った。 俺は待っている間また何となくネルを見ていた。 本当、良く動く。たまに客に餌付けされている様だけど……。口がムグムグ動いている……。 「……お待たせしました」 「おう、じゃ行こうか」 現れたハウルの格好は黒いシャツにベージュのズボン、皮のブーツと至ってシンプルだった。 ただ、腰には片手剣を佩いていた。軽装に合わせたのかな? と言うのも、先程装備していたものと違うからだ。 そして俺達はとりあえず宿から出た。 もう外は闇が支配しており、明かりがすでに幾つも辺りを照らしていた。 明かりの照り返しでハウルの金髪が光って見えた。おおーキラキラして見えるな! 「アサヒさん何か食べたいリクエストとか、有ります?」 「いんやー……ハウルに任せるー」 「そうですか? じゃぁ……」 そう言いながらハウルは歩き出した。 俺はそんな彼の横を歩いている。 ……それにしてもハウルは背、高いな……。180cm以上は確実にあるんじゃないか? 「そうだ……アサヒさん、お酒は駄目ですよ」 「……え……何で……」 「さぁ? ルツさんにさっき"酒は飲ませるな"と言われたんで……」 ハウルの言葉に、俺はルツのベッドで寝落ちした事を思い出した。 確かにあれはまずかった……。 シッカリ釘を刺されてしまった。しょんぼり。 そうこうしているうちに店に着いたらしく、ハウルが「ここですよ」と教えてくれた。 見上げた先にあった看板には『お好み焼き・ハチ』とあった。 ……もう、俺は驚かないぞー(棒読み)。何でも大体リンクしてるな! いや、便利だけど……。 俺が悶々と考えているうちに、ハウルは店の扉をくぐっていた。 俺は慌ててハウルの後を追って店に入った。 店内は少し照明を落としている様で、やや薄暗い明かりが最初は気に成ったが、通された机には別な明かりが備え付けられていてそれで手元に必要な明かりを供給している様だった。 「ハウルは最近何してるんだよ」 「俺ですか? 近くの村に剣技を教えに行ってますよ。簡単な基礎ですけど……」 「へぇ、ハウル、今は先生なんだ?」 「そこまでじゃないですけど……。まぁ、ギルド依頼ですよ。 俺今ちょっと療養中なんで……前のクエストで無理し過ぎて。でもそろそろ復帰出来そうですけど」 はぁ~……色んな依頼があるんだな。 俺も早く何か依頼をこなしてみたいな……。 明日は武器も手に入るし、ギルドに顔を出すのも良いかもしれないな! それにしても、あんま無理しちゃいかんぞ、ハウル! 身体は大事だ! 「お待ちどう様です~。ごゆっくりどうぞー」 俺達がそんな会話をしている内に、注文の品が届いた。 ちなみに注文内容や、焼きは全てハウル任せだ。ありがたい。 あ、でも具材混ぜくらいは俺も手伝ったよ。 そしてここの勝手が分からないから、とりあえずハウルの手元を観察する。どうやら俺の記憶にある作り方と同じな様だ。 それから他愛ない会話をして、俺達はお互い利用している小熊の尻尾亭のロビーで別れたんだ。

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