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第22話 かーちゃんのデータ解析! ……の巻 -2-
そしてメシを熊の左手で済ませた後、俺は昨日言われた通り、武器屋にやって来た。
店内に入ると、ローブを目深に被った人物が俺の方に歩いてきた。
どうやらその人物は店を出るらしく、扉の方にまっすぐ歩いてくる。
俺は邪魔にならないように脇に避けた。
しかし、そいつは俺の方を見ると、「うわ!」と声を上げて飛びのいた拍子に後ろにこけそうになった。
俺はすかさずそいつの腕を掴んで転倒を阻止した。
俺に腕を捕まられて、半分仰け反るような形のままそいつはワナワナと震えて何かに怯えている様だ……。
フードを目深に被ったローブ姿なので、顔が見えるのは主に口元だけなのだが、明らかに何かを言いよどんでいる。何だ?
「……大丈夫?」
「は、はい……ありがとう……」
軽く声を掛けると、俺を一瞬見て、すぐさま俺の視線を避ける様な仕草をしてきた。
え? 何なの?
しかし、すぐさま再び俺の方を向くと、こんな事を言ってきたんだ。
「あなた……色んな人を連れて……普通なら……」
あ。それって俺の中の生体データの事?
アビも"色んな色が見える"とか言ってたし、何か見える人には見えるの?
「あ……急にこんな事……すみませんでした……」
そう言うと彼はそそくさと店を出て行ってしまった……。
「何だったんだ……」
訳が分からん……。
まぁ、俺は自分の用事を早く済ませようかな!
二振りの剣がどんな仕上がりになっているか楽しみだからな!!
「お、来たね」
「こんにちは、出来てる?」
俺の軽い問いかけに、アルフレッドは「ちょっと持っててな……」と言い残して、一旦店の奥に引っ込んでしまった。
その間店内を見回すと、今日は冒険者らしき客が数人、思い思いの武器を見ていた。
俺が辺りを観察しているうちに、彼は戻ってきた様で、「お待たせ」と俺に声を掛けてくれた。
俺はその声に彼の方を向くと、カウンターの上に二本の剣と、革製のホルダーが置かれていた。
「このホルダーは剣を留める物だけど、剣を両脇にも留められるし、片側に寄せても留められるタイプだ。好きな留め方をすると良い」
「ありがと」
俺は早速つけ方を教えてもらいながら、とりあえず両脇に剣を留めた。
特有な剣の重みに、少し違和感があるけど、そのうち慣れるだろ。
そしてその場で剣を抜いてみた。
刀身が店内の光を反射して、覗き込んでいる俺が映っていた。
丁寧な仕上がりに感じ、俺はすごく満足した。
「良いね。気に入ったよ」
「毎度! じゃぁ、残りの代金宜しく」
「分かった」
そこで俺は残りの代金を払って、店を後にした。
あとは洗濯物屋に行って、頼んでいた品を受け取ろうと店への道を思い出しながら俺は進んでいった。
「あ、いらっしゃいませ~」
店内に入ると、すぐにユークが声を掛けてきた。
俺がカウンターに近づく前に、彼はすでに頼んだ物を用意してくれているみたいだ。
「出来てますよー。はい、品物です!」
「ありがとう」
そう言いながらユークはカウンター下から一つ紙袋を取り出すと俺に渡してきた。
石鹸の良い香りに頬が緩む。
ルツが帰ってくる前に用意出来て良かった。
そして近づいて気が付いたんだが、カウンター脇に何か固形の物が篭に入って大量にあった。
俺は興味が惹かれて一つてに取った。
「……?」
「あ、それ僕が作ってる"石鹸"なんです。
最近は簡単な魔物をモチーフにしてるんですよ」
ユークの説明に、俺はレンネルの言っていた"ウサギガエル"を思い出した。
「……ウサギガエルの形、ってある?」
「有りますよー……確か……あ、これです!」
ユークは俺の掌に"ウサギガエル"を置いてくれた。
"ウサギガエル"は名前の通りの容姿をしていた。
ウサギ+カエル。
……造形的によく出来てる。本物は見たこと無いが。
まぁ、長い耳が蛙から生えていて、手足に体毛が有りそうな雰囲気だな、これを見て軽く分析してみると。
手足に細かい毛羽立ちが感じられる。
ひっくり返すと、ラベルが張ってあり、少しこの魔物の説明が書いてあった。
えっと……?
"ウサギとカエルのハイブリッド種! 身長30cm・跳躍力は最高100mにも達する。"
おおう……。意外と想像してたより大きいな……。
「ウサギカエル好きなんですか?」
じっと見つめていた俺にユークは少し勘違いした様だ。
「じゃ、アサヒさんに良かったらそれあげます。サービスです」
「え? 良いの? ありがとうな」
「良いですよ! そのかわりまたウチを利用して下さいね!」
……カワイイ顔して商売上手だな~……ユーク!
俺は軽く「分かった」とだけ返しとおいた。
石鹸貰わなくとも、利用はガンガンするけどな!
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