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第43話 甘さは控えません。 -3-

ハウルに着いて行った先の店は、まぁ、スィーツな店だった。うん、半分予想してた。 「ここの"プチシューチョコタワー"が試したいんですけど、一人じゃ何となく入り辛くてですね……」 「ほぉ……」 ……これは……男二人でもどうかと思うぞ……。 まぁ、良いや。ハウルの希望を叶えるのが俺の使命だからな。ついでに俺も楽しもう。 さすが甘いの好きなだけあるな。 ハウルの言った"プチシューチョコタワー"なるものが表の店の黒板にイラストで描かれていた。 見るとどうやら、プチシューを積み上げてチョコで固めた物らしい。中には良く分からないけどムースらしき物が入っているのか? なるほど? 気に成るし、見た感じ美味しそうだな。 そして俺達は早速店内に入り、オーダーを済ませた。ちなみに俺は適当にドーナッツ数個を注文した。 俺達の他にも客は居るけど、まぁ、大体女性客が多く見れた。まぁ、こうういうもんかな? しばらくして注文の品が来た。 ハウルのは確かに外の黒板通りの物だった。 食べ始めてしばらくしてから俺はハウルにあの店主が言っていた事を聞きたくなった。 「な~、ハウル……ラビットジャンクの店主の兄ちゃんが話てたのって……今の怪我に関係してる?」 「ああ、してますよ。最近受けた"オーガ討伐"の事ですよ。 その討伐の時の怪我がやっと癒えたんで、俺もそろそろ動きますよ」 ……ハウルの話をまとめると、ハウルを含めた4人程でオーガ討伐に行ったんだってさ。 ま、オーガ自体も単体じゃなくて複数体相手で、とにかく斬りまくっていて、ついに最後の一体に成った時に深い傷を受けたと。 手負いの獣とかと同じで、間際に気を抜くとやばいってやつだ。別にハウルは気を抜いたわけじゃないと思うけど。 とにかく、ハウルはオーガを追って、追い詰めているうちに自分とオーガだけになっていたんだと。 ようするに、仲間から引き剥がされてたって訳。深追いしちまったんだな……。 仲間は仲間で戦ってて、どうやらジワジワやられて全体を把握してなかったみたいだ。 そしてハウルの話は終盤を迎える訳だが…… 「……それが最後のオーガの息の根を止める為に、懐に入ったまでは良かったんですけど、奴の最期の攻撃を結構まともに受けましてね……」 「ぃえ!?」 「結果として仕留めはしたんですけど、しくじりましたよ。あまり熱くなっちゃ駄目ですね」 「……………………」 「奴の攻撃で鎧の胸の部分は内側に減り込むし、剣は最終的に折れるし……酷使しすぎたんですかね……それまでに結構斬ったし……はぁ……」 「……す、すげぇな……」 「鎧は本当、直せないと思ったんで新しく頼んでて……。あ、今はスペアを使ってるんですけど……。 それにしても、この頼んだの、チョコの濃さが丁度良いですね。来て良かったです」 「おう、それは良かった。もっと頼むから、食ってくれ」 ハウルはなかなかそんなハードな話を、涼し気にプチシューを食べながら話して来る。 戦闘とスィーツ……。すげぇバランスだ。 そして、フォークの速度が衰えない。有る意味さすがだ。 「……なぁ……ハウル、この"トリプリンキャッスル"、っての食べるか?」 「え? 良いんですか?」 「ああ、良いぜー。俺、これどんなのか見てみたいし」 「じゃ、お願いします。アサヒさん、ちょっと席外しますね」 「おうー」 おーおー、瞳が輝いて見えんぜー。 そんなハウルは多分、トイレに席を立ったんだと思う。 他に何か面白そうなのないかな?今のうちに色々頼んでおこうかな。 そこで俺は店のメニュー表をゆっくり捲り始めた。 「"氷雪・草の果実の森"?」 「"百年樹バウム"?」 「"ギガファントムスフレ"?」 「"スパークルレインボーゼリー"?」 ……etc…… ええーい、めんどくさい! 気に成るの適当に頼んでみようかな! 「お待ちどう様ですー。あ、机、繋げますね?」 そう言いながら女性店員は持ってきた物を置くと、手早く俺達の使っているテーブルに隣のテーブルを連結させてきた。 すでにこの段階で、今後の展開が見えなくも……ない……。 そして俺がオーダーした面々が揃った。 "氷雪・草の果実の森"として出てきたのは、草の果実……のアイス盛り合わせだった。"森"="盛り"……。 ―……スイカ、イチゴ、メロン、パイナップル、バナナ…… つまり、"草科"の果実の事で実はこれらは野菜分類の物なのだ。果菜、ってやつだ。確か。 コロコロとしたボール上の色彩豊かなアイスが重なっていた。 "百年樹バウム"はまぁ、あれだ。バームクーヘンだ。一応、生地が百層の重なりを見せて……る、のかな? バームクーヘンは木の年輪がイメージされてるから、まぁ、素直にそのままのイメージで攻めている。しっとりした生地が良さそうだ。 "ギガファントムスフレ"は巨大なスフレだ。スフレは熱いうちに食べないとしぼんでしまうそうだ。生地はチーズ使用のふわふわだ。 そして、その生地を突っ切って進むと、中にはトロトロチョコが仕込まれているからそれと絡めるとまた別の顔になる。 しかもチョコには僅かにニンニクが混ぜられており、スパイシーな味わいになる様に計算されている様だ。 "スパークルレインボーゼリー"……これは七色の弾けるゼリーが七階層に分かれている。 パフェの様に、上には果物やらカキ氷やらが乗っている。ああ、何だか夏だなぁ……。 そうそう、"トリプリンキャッスル"は、主に三つのデカイ焼きプリンが城を形成しているもので、プルプルしてる。プルプル。 焼きプリン特有のカラメルソースの香ばしい香りが堪らないな~。 もちろん、果物やら生クリーム等の装飾も施されている。 土台にスポンジケーキをし様している様で、ガラスの器越しにベリー系の赤い層が見えた。 ……と、まぁ、次々と現れるオーダーの品々! 見た目はそれぞれ良いのだが、量もそれなりにあるのだ。 何てったって、机が連結されて、今は机二つになっているからな! 壮観! 「……さすがにこれは頼み過ぎです、アサヒさん……」 「あ~……やっぱり? どうしようか? お持ち帰りとか出来ねぇのかな?」 「確か持ち帰れませんよ。……誰か呼びます?」 「え? 出来るの?」 「出来ますよ……多分ですけど。来れると思いますよ、そいつ……」 そう言うとハウルはズボンの後ろポケットから例の魔方陣を取り出した。チャーンス! 「あ! ハウル! 俺と名前、名前交換して!」 「はい、それじゃぁ……まずは交換しましょうか」 「おう!」 まぁ、別に普通に頼んでも良いんだけどさ。タイミングとか有るだろ? うんうん、ハウルと名前交換出来て良かった! 後はルツとレンネルとグリンフィートと、……ロイさん辺りかな? あ。リリサ先生も欲しいところか……。後は誰かな……? まぁ、そのつどで良いかな? うん。

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