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第45話 疑問と沈黙 -1-

―……ザ……ザザザザ………… 「……雨、かぁ……」 今、俺が居る宿のフロアは今は誰も居ないらしく、やけに静まり返っている。 そのせいで外からの雨音が良く聞こえる。 今日俺はどこにも行かないで、こうしてルツの帰りをルツの部屋の階のフロアに設置されているソファーに座りながら待つ事にしたのだ。 ―……待つ事にしたのだけど…… 「暇だ……」 ……待っているだけ、というのも案外疲れるものだなぁ……。ルツ、早く来ないかな? まぁ、俺が勝手に待っているだけなんだけど……。 「ふぁ……」 暇だと眠くなるのか、雨による気温の低下で体温が下がって眠くなるのか、飯を食べたばかりだからか分からないが、眠くなってきた。 最近、俺ってば逆に寝過ぎかもしれない……。 "人"の身体に慣れるのに、体力使っているのかな? 「ん……」 ……少し、目を瞑るだけだから……すこ……し……………… 「……おい、アサヒ……こんな所で居眠りするな。風邪ひくぞ?」 「んぁ~……? あ、ああ、ルツ、お帰りぃ……」 「ああ、ただいま……ほら……」 ……やば……いつの間にか寝ていたのか……。 周りが暗い……もしかして、夜になってる? 「これ……借りてた服……ありがと」 何だか半覚醒気味だけど、お礼と渡す物はしっかり渡さないとな。 ルツの顔がまだぼんやりしているけど、一応本人で間違いなさそうだ。……うん。 俺は用意していた紙袋を屈んでいるルツの胸元辺りに持っていった。 ルツは一瞬俺の言っている意味が掴めなかったのか、不思議そうな顔をしたけど、直ぐに短くお礼を言って受け取ってくれた。 「アサヒ、こんなに身体が冷えてる……」 「……ルツだって、冷えてるよ……」 「まぁ、俺は外から来たから……外、今雨降ってるしさ」 「……ん」 ルツの言葉を意識半分で聴いて、俺はルツの腕をさすった。 ほら、温まるかも……しれないと思ってさ……。 「ほら、ちゃんと起きろよ」 「……眠い……」 やっぱりルツの声が遠く感じる。けど、ルツは目の前に居る……。ルツが居る……。ルツ……。 ……何となく一人で居たくなくなって来た……。 「……あのさ……少し一緒に居て欲しいなぁ……なん……て……。俺……」 「……アサヒ?」 「………………」 ルツの呼び掛けに言葉を繋げられない……。どうしてだろう? 「……良いぜ? とりあえず俺の部屋に来いよ」 「……ありがと!」 ルツは俺にそう言いながら、俺の髪をワシャワシャと乱してきた。 ああ、そうだ……これはルツの癖、っぽいんだよな。俺は別に良いけどね。 何だか少し懐かしい……。数日前の記憶が蘇った。 「……今日は俺の部屋に泊まるか?」 「ルツ~……優し過ぎ~。泊まる泊まる!」 「じゃ、部屋行って必要な物取って来いよ。俺は風呂に入ってるから、勝手に入って待ってろよ。入ったら、鍵は閉めろよ?」 「うん! 分かった! 用意して直ぐ行く!」 俺の返答を聞いてルツはまた髪をワシャワシャしてきた。とりあえず緩く笑っておく! おーし、何だか覚醒してきた! 自分の部屋に向かいながら、何となく今、自分は変に弱っているのかと感じた。 独りじゃ居られない瞬間がある。スライムの時は今以上に独りだったのに……。 俺は色んなものを一気に手に入れて、その先が分からない……。 ……それとも単純に、気になる事が多いのかもしれない。例えばさ…… 「……アビも、今はどうしてるのかな……」 ……そんな俺の部屋は相変わらずだった。 僅かにわざと開いてある窓の隙間から侵入した風が、ユラユラとカーテンを揺らしているだけの部屋だった。 ルツが風呂に行っている間、俺はルツのベットでゴロゴロしていた。 俺がそんなくつろぎ方をしていたらルツが風呂から上がってきた。Tシャツにハーフパンツの様な姿だ。部屋着かな? 「おぅ、来たな」 「うん。鍵はかけたよ」 「そっか。分かった」 当たり前の短いやり取りの後、ルツはベッドの端に座ってきた。んー、石鹸の香りだねぇー。 「ルツ、温まった?」 「おーまぁな。俺は風呂に入ったからな。それよか、お前は冷た過ぎじゃないか?」 「俺ぇ?」 「ああ、ほら、布団に入れよ。俺はそろそろ寝たいんだ」 「そうか。うん、分かった」 ああ~、布団と人肌で段々温まってきたなぁ。温い温い。 しかもルツは風呂上りだし、これは良いわー。 「お前体温低すぎ……前からだけど……」 「……じゃ、今はルツが温めて……」 俺はそう言いながらルツの鎖骨に額を擦り合わせた。 俺なりの甘えだ。 そしてルツは優しい。 「まったく……。まぁ、俺は風呂上りだからな……」 ……ほら、俺を甘えさせてくれる……。 ルツはそんな俺をそのままに、本を読み始めた。 何となく、前方から後ろに回って背中から抱きつく。 背中に頭を着けていると、ルツの規則正しい心音と、パラリパラリと時折本のページを捲る音で満たされてきた。 でも、外は相変わらず雨だ。 「ん~……ルツ……」 「何だよ……」 「……色んなお礼に、色々してあげる」 「は?」 俺の突然の発言に、ルツは少し首を回して後方に視線を送ってきた。 そして、ポカンとしている様に感じた。

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