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第51話 気持ちの行方 -3-
俺は何とも意外な展開に驚いた声が自然と出た。
周りに誰か居たら、確実に鋭い視線を浴びせられるだろう。だってここは"王立図書館"だからだ。
しかし、今の俺達の周りは誰も居ない……。
この会話は俺達だけで、他の誰かは知り得ないのだ。
「……ハウルと……宿で……してた、だろ? 俺……予定より早く帰ってきててさ……偶然遭遇したんだ……そんで…………」
「あ……ああ、ああ~……」
そうか、あの一瞬の視線はグリンフィートだったのか……。
「……俺、アサヒを見ていると、なぜか……胸がざわつくんだ……。アサヒが気になって仕方ないんだ……」
「……グリンフィート……」
「アサヒ……」
言葉の甘さとは裏腹に、グリンフィートの瞳の奥に、危険な……そう、生命に関わる様な危険性が孕んでいると感じるのは何故だろうか?
……もしかしてそれは俺が元スライムで魔物だから、グリンフィートの勇者としての血がざわついているのでは???
ひ、冷や汗モンだ。ゆゆしき事態だ。生死の問題かもしれない!
そしてそんな俺の考えは他所に、グリンフィートは俺の腕をそっと掴んできた。
少し頼りなげな掴み方で、「アサヒ……」と俺の名を小声で呼ぶ彼もまたどこか頼り無げだ……。
断る理由すら見つからないまま、俺は流される様にグリンフィートに質問していた。
「……本当に確かめたいのか?」
「ぅん……分からないのは何だか嫌なんだ」
「そっか……」
その言葉を聞いて、俺はグリンフィートの顎下に手を添えた。
グリンフィートは特に変化は無く、俺の次の行動を待っている様に見える。
だから、そのまま添えた手を動かして、グリンフィートを軽く上に向かせた。
「グリンフィート……」
「……んぅ……」
そのまま彼の唇に自身のを軽く重ねてみる。
思ったより柔らかい感触に、頭の中に痺れを感じた。
「……どう?」
「……いまいち……分からない……」
俺の言葉に戸惑いながらグリンフィートが答えてきた。
眉根を寄せて、考えている風だけど……。
まぁ、素直な感想なんだろうけどな。
「……もっと……」
「え?」
「もっと、キスして……アサヒ……」
そう言いながら、グリンフィートは背伸びをしてきた。
俺の方が背が高いから自然にそうしたんだろうけど、その強請り方はちょっと反則かなぁ……?
俺の衝動を突き動かすには、十分だからだ。
「……じゃ、もう一回……」
「……ん……」
一応断りを入れてから、再びグリンフィートの唇を塞ぐ。
手は繋いだままなのだが、重ねた瞬間に"ピク"と動く変化があった。
俺は唇を重ねたまま、グリンフィートの腰に手を回して、軽く彼を持ち上げた。
すると、グリンフィートは俺にしがみ付く様に繋いでない方のを使い、腰に手を回してきた。
「……はぁ……」
「アサヒ、まだ……ん……」
「……グリンフィート…………人、来るんじゃ……?」
「……なら、個人で調べ物出来る個室があるから、そこに行こう……? アサヒ……な?」
「…………ふぅん? ……良いよ」
ああ……何て積極的なんだ、グリンフィート……! お兄さんちょっと君の将来が心配だな!
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