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第58話 月の軌跡に沈む夜 -4-
それから首筋に、鎖骨にと段々下にかーちゃんの唇が降りて行く。
「ンッ!」
「アサヒ……緊張してますか?」
「……し、してるよ……!」
かーちゃんの舌が俺の乳首を吸ったり、クニクニと押し付けて変形させてる。素肌に触る、かーちゃんの整った鼻梁や髪の毛が少しくすぐったい……。
やがて舌先がもう一方に移り、同じく吸ったりくてくれてる。かーちゃんの舌の温かさで頭が変になりそうだ。
ビリビリした痺れが、そこを中心にして上と下に波紋の様に刺激してくる。
「かぁちゃん……やばい……きそぉ……」
俺の言葉にかーちゃんは胸から離れ、口付けに移行してきた。
「ン……ん……?」
「ん……」
「かーちゃん……なんで……?」
俺のそんな問い掛けに、かーちゃんは小さく笑って「アサヒ、こっちはまだ我慢しましょうね?」と言ってきた。
ええ? この状態で? ……まぁ、何とか押さえつけられそうだけど……、もっと近くに成りたいんだよなぁ。
「じゃぁ、こっちでもうちょっと深いの……ちょうだい……? かーちゃん……」
「……アサヒ……」
「かーちゃん……欲しい……」
「……仕様が無い子ですね……少しですよ……」
「んんぅ……」
口を開けて、舌を少し出してかーちゃんに強請ってみた。
つまりさ、深い口付けを強請ったんだよ。
かーちゃんは俺の希望通り、舌を絡めてくれた。
この前の虚脱感とは違う痺れた感覚が俺の中に生まれていく。そうそう、これだよ……。
かーちゃんの舌が俺のに絡んできて、ただもうそれだけだ……すごく良い……気持ち良い……。
「ン……ァはぁ……」
「アサヒ、どうです?」
「……この前と、違う……」
「……加護が溜まってきたんですかね? 良い傾向です」
それって本当? かーちゃんと居れる時間が増える、って事?
「……一緒に居れる時間が増えたの?」
「……そうですね、増えましたね」
「!!」
やった! 俺の身体が上手く変化してるんだな!
かーちゃん、やっぱりもっと触って欲しい。
早くもっと沢山、かーちゃんと一緒に居たい……。
「では、今回の"加護"はこの位にしましょうか……」
「……エッ……」
「次もしますよ。少しずつです、アサヒ」
「………………分かった……」
そうかぁ。しょうがないか……今までの事を思い出すと、かーちゃんは"神気切れ"でぱぱーっと帰っちゃう事が多かったな……。
それに、血の気も引いて見えるし……心配になるより、この状態が良いって事だな。うん。
俺がかーちゃんの横でこんな事を考えていると、かーちゃんが俺に質問してきた。
「ところで何でアサヒはここに?」
「け、剣の稽古と魔法を使ってみようと思って……」
「そうですか、偉いですね。大事です」
「じゃぁ、かーちゃん……褒めてくれよ……?」
俺のこんなお願いにも、かーちゃんは笑顔で俺の頭を撫でてくれた。嬉しいなぁ。
子供っぽいかな?
「さて、そろそろ帰ります……アサヒ、おやすみなさい……」
「んぅ…………かーちゃん、おやすみ……」
かーちゃんは帰る間際に加護をくれた。
「……かーちゃん……」
……現時刻としては子供は寝る時間だけど、俺はどうやらそんな可愛らしく寝れそうにないね。
だって俺は一応、大人だからさ?しょうがないよな?
……でもまぁ、今日はかーちゃんの加護の余韻を楽しみつつ、健康的に魔法を大量に解き放って色々発散させるか!
―……え? 何を"発散"させるかって? それは大人の事情ってやつだよ。ははッ!!
そしてその夜、俺は草原に幾つか大穴を開けたり、大穴から出てきた岩を砕いたり、何かデカイ火の玉を出したりした。
もちろん無詠唱だ! こう、さ、イメージで出現させれば良いんだ。
これは、もうすでに俺の想像力の問題になってきた気がする……。
その気に成れば、炎の魔法で擬似フェニックスとか出来そうだ。召喚とかじゃないんだ。魔法で形だけ作るんだよ!
でもまぁ、傍目には迷惑な話だよなー。
好き勝手やった後にさすがに派手にやり過ぎたかと思い、俺は辺りの修復として最後に試しに草木に治癒魔法までかけてみた。
そしたらさ、結構効くのな! これには驚いた……。
蔦とかニヨニヨと成長していく様は思わず「はー」とか感嘆の声が出た。
でも、まぁ……スッキリしたし面白かった!
満足していつも寝転がっている大岩に仰向けに身を横たえると、頭上に当然だが月があった。
まだ新月ではないけど、よく見ればその姿はそれに近い気がした。
細く、消えてしまいそうだ……。
「……かーちゃん……」
そして俺は思わずそんな事を口にしていた。
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