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第61話 対決? 猫くんとぺたぺたサワサワ合戦! -2-
レンネルに誘われて着いて行った彼の借りてる部屋は、ユークの洗濯物屋のすぐ裏手にあった。
「何であんな所に居たんだ?」
「たまにユークんちの手伝いしてんだよ。バイトだよ、バイト。
ほら、ユークに洗濯頼んでくるから上着とズボン脱いでよ」
「そっか。分かった、今脱ぐから……」
なるほど? ギルドの依頼や探検ばっかりしている訳じゃないんだな。
そしてレンネルは俺から濡れた上着とズボンを受け取ると、サッと出掛けて行ってしまった。
俺は今、タンクトップに下着で、レンネルが作ってくれたコーヒーを飲んでいる。うん、美味い。
程無くしてレンネルが帰ってきた。
「ユークにアサヒの洗濯物、終わったら届けてもらうように頼んできた」
「そっか、悪ぃな……」
「いや? 俺も着替える……」
レンネル仕事速いなぁ……。
そして今度は自身が着替えを始めている。
まぁ、洗濯物は俺だけだからな。レンネルは撥水加工されてそうな皮のマント着てたから基本大丈夫そうだ。
そして俺は飲み終わったカップを机に置きながら、レンネルに話しかけた。ある事を思い出したんだよ。
「なー、レンネルー」
「ん? 何?」
俺の言葉を背後に受けて、着替えながら聞いてるレンネルに俺は前々から考えていた事を口にしてみた。
「耳、触らせて」
「はぁ?」
俺の言葉を受けて、レンネルは上半身を捻ってこちらを向きながら怪訝そうな顔をしてきた。そんな怪しまなくても……。
「いやぁ、前から気になってたんだよ……その耳の触り心地を……」
「み、耳? 耳……耳なら良いけど、少しだからな……」
「お? 良いの? やった! んじゃ、早速……」
妙に念入りに言われたのが気に成るけど、許可を得た俺は早速レンネルの猫耳を堪能する事にした。
「おおースベスベ! 適度にふにゃふにゃ!」
「…………も、もう良いだろ?」
レンネルの猫耳は少しペコペコしていて、とにかく楽しい。ああ……癒される!
俺の破顔具合に、少し不安そうにチラチラ見上げるレンネルは何だか可愛い。
「んじゃ、次はこっち……」
「あ! 尻尾には触んなよ!」
「え?」
「ぅあッ!!!?」
「……え…………?」
び、びっくりしたぁ……。
俺が一撫でしたら大声出すんだもんな。いくらここが少し人通りから離れたところでも、下手すると向こうに届くぞ……。
「……~~~!! ば、ばか! 尻尾には触るなって言っただろ!」
更に驚いた。さっきまで細かった尻尾が、"ぼわッ"となっているのだ、"ぼわッ"と。
レンネルは素早い動きで俺から尻尾を抜き去ると、文句をつけてきた。そして頬が赤い……。
まぁ、言われながら触った俺が悪いんだけどさ。
でもさ、レンネルの尻尾の触り心地は最高だった! もっと撫でたいなぁ……。
「悪い悪い……。でも、レンネルは尻尾が弱いのかぁ……はははッ」
「……! うっさい! アサヒだって何処か弱いところ位有るだろ!」
「え~? 俺? さぁ? 有るかな?」
「ムカつく!」
本当、どこかに有るのかね? 弱点がさ?
スライムだったら、"コア"だけど、人になった俺じゃどこかな? 前世は腰とかくすぐったくなったけど……。
まぁ、"腰"の事はもちろん黙っている。
「……探す!」
「はぁ? ……探す、って……」
言いかけてレンネルを見たら、何だかホントに悔しそうだ……。可愛いの。
……ふ~ん? じゃ、レンネルと少し遊ぼうかな?
「良いぜ~探せよ」
「良し! んじゃ……」
そこですかさず、俺の言葉に意気揚々と右手を伸ばしてきたレンネルにストップをかけた。
「待った! 俺が一方的に探されるのはズルくない?」
「……う~ん?」
「だからさぁ、レンネルが一回探す……撫でたら、俺はレンネルの尻尾を一回触る、ってのでどうかなぁ? チャンスは四回でどう?」
「え……? んんん……」
俺の提案に少し考え始めたレンネルだけど、直ぐに答えは決まった様だ。
「……いーよ」
……へぇ? 良いんだ?それなら俺だってウェルカムだ。両手を広げて「さぁ、どーぞ」だ。
うんうん、楽しくなってきた。ゲーム感覚だ。
「そう? じゃ、レンネルからで良いよ~」
「よ、よ~し……」
―……ペタリ……サワ……
「…………残念、何とも無いかな?」
「う……」
レンネルが触ってきた所は脇腹だ。
……結構マジで狙ってくるね?
「じゃぁ、俺の番だよな?」
「ぅ……!」
「ん~触り心地抜群だな~」
「んん~~~!!!」
じゃぁ、この調子でサワサワ対決と行きましょうかぁー! あー顔が緩むの押さえらんねぇな!
さて、俺がレンネルの尻尾を堪能した後は、レンネルのターンだ。
何処を攻めて来る気かな?
「ここは?」
「あー二の腕かぁ~まったくだなぁ~」
「……ぐっ……!」
この悔しそうなレンネルの様子を見ると、中々な自信が有った様だ。
でも違うモンは違うんだよなぁ……。
俺はそう思いながら、レンネルの尻尾に手を伸ばした。
一瞬泣きそうなレンネルの顔がチラついたけど、俺はそのまま尻尾を堪能した。
「あさ、ひ……! ッ……!」
「何?」
「な、何でも……な、ない……!」
―……本当かな? レンネル、くすぐったいのにあまり強がりは良くないなかな……可愛いけどさ? あー良い眺め。
じゃぁ、猫くんの次、行ってみよう!
「う~~~ん……ここ?」
「お? 腰かぁ………………うん、普通だなぁ?」
「~~!!」
どうやらこの身体は前世と一緒では無い様だ。残念、腰は外れだ。前世だったら大当たりだったんだけどなぁ?
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