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第71話 ラストダンスは君と -4-

あの三人組から離れて、俺は森の適当な木の陰に隠れてその瞬間を待った。 そう、"人"に戻る瞬間だ。 程無くして、俺の身体が"人"に戻っていく……。どうやら時間的に間に合った様だ。 スライムに成った時と同じような七色の光が、今度は俺に収束して包んでいく。 ―……そして、スライムの時とは違う身体の重みを感じる。良いね、これはこれで安心するよ……。 「……ふぅ……大冒険だった……かな? ……ん~……宿に帰って寝よ……ふぁ……」 俺は身体を所々バキバキと鳴らしながら宿へ向かった。 帰り道、あの男はまだ木の根元で気を失っていた。 少し調子に乗り過ぎたかと思ったが、エドの泣き顔をやスノウの事を思い出した……。 ……無理矢理は良くないよな、無理矢理は。 あと、スライムを馬鹿にし過ぎだ。 自分の事は全部棚に上げておいて、俺はやっぱり放置しておく事にした。 ……ああ、明日も平和でありますように! 次の日……まだ陽がある内だが、俺はあの場所に行ってみた。 あの場所とは、俺がエド達と別れた場所だ。 そして…… ―……道の端に見知った少年が居た。 「……おかしいなぁ? いつ居なくなったのかな……」 「………………」 とりあえず黙ってエドの近くまで来たが、俺からは何もしない。 エドの無事そうな姿がこうして見れたし、そのままが良いだろう。 ただし、エドから何かあった場合は、状況によって反応を返そうと思う。 一歩一歩と俺は普段通りに足を動かし、エドの直ぐ傍を通り過ぎ…… 「……お兄さん……あの……この辺で水色のスライム、見ませんでしたか……? この位の大きさなんですけど……」 ……様として、話し掛けられた。 俺は彼の言葉に立ち止まり、エドの方を向いた。彼の手には瓶が二つ持たれていた。 そう、ジャム瓶の中でスカスカ寝ているスノウとクロテンをエドは俺に見せてきたのだ。呑気なもんだなぁ。 そして体内には例のマジックキャンディなのか、黄色と紫の玉が取り込まれていた。それはゆっくりと溶けているのか、表面からユラユラとしたものが出ている。 ……でも、まだこうして大事されて、一緒に居る姿を見れて俺は内心嬉しくなった。 「…………さぁ……? 見てないよ」 「そうですか……ありがとう御座います……」 あーあ……見るからに肩を落として歩いていく姿は可哀相だけどさ、俺はエドと一緒に居るわけにはいかないんだよ……。ごめんな。 ……でも、まぁ、スライムになったらまた会いに行っても良いかもしれない。そしたら、またスイにも会えるかな? ……その時は食べ損ねたマジックキャンディでも強請ってみようかな……。 ―……なぁ、エド?

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