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第84話 魂で踊れ!!ポンコポンコダンス! -3-

連れて行かれた先は無人の荒れた屋敷だった。 しかしこの屋敷……主な棲みかではない気がする。只単に雨風、夜露を凌ぐのが目的なのが何となく分かる荒れっぷりだ。 そして俺達は御輿から下ろされ、そのままの足で元は豪華な客間だったのではと思われる部屋に通された。 朽ちたソファーには幾枚も葉っぱが敷かれており、俺達をここまで案内して来たタヌキに身振りで"座れ"と言われた。どうやらリーダー格のタヌキ以外は"喋らない"様である。 「……何となく……勢いでここまで来たけど、俺の荷物は……どこに……? はぁああ……」 「うむ。確かに……そうだな……」 「しかも何で連れて来られたか、意味が全く分からない」 「……だな……。勢い過ぎたな……」 俺達がそんな反省会を開き始めた時に、部屋の扉が開き白いタヌキと袋を抱えたタヌキが現れた。 そして彼らは俺達とテーブルを挟んで反対側に来た。白いタヌキは一瞬こちらを見てから、"クィ"という様な僅かな頭を揺らす動作を隣りに立ったタヌキに示した。すると袋を持ったタヌキはそれをテーブルの上に置いて彼側のソファーの横に移動していった。 自然、俺とシュトールは置かれた袋に視線を移していた。 白いタヌキは俺とシュトールが興味深げに袋を見ているのを、どこか満足そうに眺めている。 ≪サァ、コレヲアケルゾ。シッカリミロヨ?≫ 「……あの袋を開けるから、確り見とけ、ってさ」 「そうか。……何だろうな?」 俺は白いタヌキが口にした台詞をシュトールに伝えた。通訳しとかないとな。 そしてあの台詞で俺達の期待感を煽って、いざ袋の口紐が解き放った問題の袋の中身はというと……。 大方……予想通りと言うか、"金銀財宝の塊"だった。これは予想通りでなえ―――……るわけない。俺は逆に興奮したね。しょうがない、それだけ魅力的に映ったんだ。 そしてそんな俺の様子を見て、白いタヌキは俺にその袋を差し出してきたんだ……。 「……え? この袋一杯の装飾品や金貨銀貨は……? 俺に、くれる、ってのか??」 そこで俺は訳も分からずその差し出された袋に手を伸ばしたのだが、そのニードルポンコは"サッ"とその袋を後ろに隠した。……何だ……?? ≪オマエラ、コレ、ホシイカ?≫ 「え……? 欲しいかって……欲しい……かなぁ……。シュトールはどうだ? あれ、欲しいか?」 「そうだな……こんなに大金は路銀にはもってこいだな。……欲しいかな」 ≪ナラ、オレタチト、トリヒキシナイカ≫ 「取り引き?」 まぁーなー。タダでくれるなんて事は無いわな。労働の見返りですね? 分かります。 「良いぜ? 取り引き、しようか」 ≪ナラ、ソコノミズイロ……ツイテコイ≫ 「良いけどさぁ、俺の事"ミズイロ"って呼ぶなよ。"アサヒ"って名前だ」 ≪……デハ、アサヒイッショニコイ。モウヒトリハココニイロ≫ リーダー格のポンコを先頭に次に俺、そして俺の後ろを十数匹のタヌキが着いて来た。そして着いて来ないタヌキ達はシュトールの元へ移動を開始した様だ。 俺は、他のタヌキより幾分か体格の良いこのリーダーと思しき白いタヌキに会話を試みた。 「……なぁ、お前に名前とか有るのかよ?」 ≪…………トクニナイ。スキニヨベ≫ 「……んじゃ、"ポンコ"って呼ぶ」 ≪ポンコ……≫ ただ一言小さくそう呟いて、特に否定の言葉は無いので俺はこの白いタヌキを"ポンコ"と呼ぶ事にした。 そして俺達は屋敷を出て裏に周り、緩やかな丘を登った。特に長いと感じる距離では無かったが、"短い"と言える長さでも無い、何とも中途半端な距離を移動して俺達は目的地に着いた。 ポンコが先頭にして歩いているのだが、突然言葉無く"身をかがめろ"と手で指示された。見れば、俺以外の付き従ってきたタヌキ達は皆、腹這いの体勢になっていた。どうやらここからは匍匐前進で向かう様だ。……服は汚れるが、今はしょうがない……。 それからヨジヨジと進んだ先は茂みがあり、その先はちょっとした崖だとポンコに説明された。 ≪ミロ……≫ 「?」 短く指示された方に茂み越しに視線を凝らすと、そこには十数体のゴブリンがウロウロしていた……。誰しも片手に棍棒を握っており、軽く臨戦態勢なのかと思えた。 「……ゴブリンが居る……」 ≪モット、オクモミロ≫ 「奥ぅ~?」 俺はポンコの指示のままに、今度はこの前シュトールがしていた様な"遠目の術"の輪っかを親指と人差し指で作り、覗き見た。試しに、と思ってやってみたのだが、これはどうやら俺の中のスキルとしてあった様だ。やっぱり便利だ。 まぁ、とにかくピントを合わせて"奥"を覗いてみると…… 「……お前らに似た……子供か? あれは……。子供のポンコが沢山いる……」 ≪ソウダ。ワレラノコドモタチダ……トツゼン、トラエラレタ……≫ 「……………………」 ≪……………………≫ ああー……この沈黙……何となく、この展開の流れってのが見えてくるよな? なぁ、そうだろ? そうなんだろ? 「……あのゴブリン共を追っ払って子供達を救出したら、あの袋の奴を俺達にくれる、ってのか……?」 ≪ソウダ、ヤル。マダアルカラ、フヤシテヤルゾ!!≫ 声は潜めながら勢い込んで俺の服を掴み、ポンコは俺に詰め寄ってきた。"フンフン"と無意識か鳴らし、些か興奮気味の様だ。

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