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第90話 刹那の共有 -5-
「い、今……動けない……から……まった……」
「それなら、アサヒは動かなくて良いだろ? ……扱くな?」
その場にシュトールに今度は俺が押し倒された。そして立場が逆転した俺の顔を見ながら、シュトールはそっと俺のペニスに指を這わせはじめて握り終わると、やがてゆっくりとストロークを始めた。俺のペニスはそんな彼の動きに自然に反応して、先端らかトロリトロリと快楽のあらわれである透明な涎を垂らし出す。
―……ぴちゅ……くちゅ……くちゅちゅ……
「ん……ッ! は……ぁ……あ……あ……」
「あふれてきた……。アサヒ、これで……イイのか?」
このぎこちない感じが……。シュトールの動きに、俺の身体が正直に反応してる。
そして手の動きに合わせて俺の口からは、短いくぐもった嬌声が出始めた。段々と俺の中で余裕が欲望に食われて変化していく。
「……アサヒ、どうして欲しい?」
「……もっと、握って……力、入れて……しごいて……は、ぁ、あ、あ……」
「うン……こう、か?」
シュトールの手が俺のを扱く度に、"キュチュグチュ……"といった水音が追加されていく。音だけで、俺のがどんな状態なのか分かるようだ。視界が霞んでいる俺は今は瞳を閉じて回復を待っている最中だ。見えないだけに、余計に想像がかきたてられて熱が集中してくる……。もうすでに俺の先走りで俺のペニスどころか、シュトールの握っている手さえ濡れている事だろう。
「ね、根元の方も……圧、かけて……」
「分かった……こう……?」
「ん、そう……それ……良い……シュトール……ッ! もっと、弄って……!」
シュトールの手の動きで吐精感が高まってきた。暴力的な解放を想像して、荒い息と同時に口角から涎が抑えきれずに流れ出た。しかし直ぐに口元に一瞬力が篭り、次に腹部に力が流れて、俺はシュトール限界を告げた。
「~~~ッ……!! シュト……る!! でるッ……」
「あさ……ひ……」
―……びゅッ! びゅぐ! びゅるうぅうぅ!
「で、た……」
「は、ぁ……ッ! ンっく……!」
俺のいまだ脈打つペニスを見ながら、シュトールが惚けた声色を出してきた。俺の先端からは白濁したものが垂れ出ている。
俺は荒い呼吸をしながら、自分の胸と腹が少し忙しくうねるのをやや霞んでいる意識の中、ただ見ていた。まだ、シュトールの魔力に中てられているのだ。
そんな中、視線を巡らせると、シュトールの顔と俺の腹に液体の残滓が飛び散っていた。
「……俺も、アサヒの舐める……」
「ん?! ……ぁ?!」
白濁した液体がまだ乗っているペニスの先端に、シュトールの温かい舌が押し当てられた。そしてチロチロと液をすくう様に動かし、先端の穴に舌先の動きを集中させ始めた。"ピチャクチャ"とした僅かな水音が聞こえてくる。先端だけを口内に含んで、舌で舐め、吸う行為……それを丁寧に丁寧にシュトールは俺に施している。
「……これが、アサヒの……? 何だ? 不思議な味……だな……でも、もっと……欲しい……」
「しゅ、しゅと……!! しゅとーるッ……!」
「ん、ん……んッ……」
―……じゅるぅ……
「~~?!」
「……ん……、飲んだ……俺も、アサヒの貰ったよ」
「……シュト……ル……」
「……少し、だけど……」
「無理しなくても……」
「無理、してないよ……俺もしたかったんだ……」
少し拗ねたような言い方をして、シュトールは俺に唇を重ねてきた。それを寝たままの体勢で受け止め、少し痺れが残る手を無視して俺はシュトールの身体を引き寄せた。俺も体温が低い方だが、シュトールも高い方ではない様だ。熱が逃げた身体は少し冷たくなってきていた。
「んッ……」
「シュトール……ん、ん……」
何度かの唇の重なりの後、俺は素直に行為の終わりを提案した。
「……身体が……これ以上は……」
「……うん、良いよ。分かっている…………この行為で終わりにしよう」
「………………」
「明日に響くと困るからな。後悔はしたくないし……」
「……うん……」
「明日、か……」
「ああ……」
この時は、俺達はこれ以上言葉を続けなかった。何をしても明日は来るし、明日の事は……分からないからだ。ただ、上手くいけば良いと願うだけだ。
それから回復を少し待ってから手早く処理して、俺達は再び葉っぱの上に寝転がった。
「アサヒ、俺の……気持ち良かった?」
「……良かった……」
「ん、それは良かった……。俺は……すごく……、気持ち良かった……アサヒ……」
少し揺れる黒い瞳で俺に質問してきたシュトールに思ったままの感想を告げると、少し恥ずかしそうに笑った気がした。
そしてシュトールは俺の左手を取ると、先程の左手の甲の加護の上に更に加護を重ねてきた。
その手を握り返すと、今度は緩く笑って俺の胸に頭を置いて、シュトールはぐりぐりと頭を押し付けて胴に腕を回している。何だか甘えられてる気分だ。
「……ちょっと疲れた……。今日はこのままで……良いか?」
「良いよ」
少し押される様なシュトールの魔力の進行が感じられるが、この位なら大丈夫だろう。
―……"今だけ"……"少しでも"……と、そういう思いで俺達は体温を共有し合いながらその夜、寄り添った。
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