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第7話
「みんな、新しいメンバーを紹介するよ」
何十帖あるか分からないほど広いリビングでは、数人の男がソファーや床に座ってくつろいでいる。
「チヒロくん。ネコ希望だからよろしくね」
チクがそう言うと、言葉に男達は爽やかに挨拶を返し。先程まで感じていた恐怖がすっと薄れていく。
「チヒロくん。なんか飲む?あ、冷蔵庫の中の物、勝手に飲んでいいからね。と言うか、この家にある物はどれも、好きに使って良いから……」
どれも。チクの目の前にある観音開きの冷蔵庫。男達がくつろぐ大きなソファー。大きなテレビ。そこから繋がる部屋には、特注としか思えない、大きなベッド。
「と言っても、ソフトドリンクは殆どないから、水かコーヒーどっちがいい?」
何もかもが、規格外だ。
「じゃ、水を……」
「チヒロくん。お酒飲めないの?」
「はい、まだ十九なので」
「十九かぁ、若いねぇ」
「おいおい、そう言う話は止めろよ」
ケラケラと笑う男達は、不潔さや不快感のない身なりで、どこからどう見ても普通の人達だ。
「……彼らはね。普段は真っ当に働いて、日常に溶け込んでる人達だよ。ただ、性的興奮が人に理解されないだけ。はい、お水どうぞ」
「ありがとう、ございます……」
「みんな、元々はオレの患者。だから、身元は保証するよ」
「患者……?」
「そう。チヒロみたいな人を助ける仕事。まぁ、ここに居る人間は、オレの趣味が高じて集まってるだけなんだけど……。さて、始めようか?」
肩に乗っていたチクの手がするりと落ち、シャツのボタンを外す。
「ほっそいねー」
「すぐに壊れちゃいそうだ」
さっきとは打って変わった熱の有る視線。それが幾つも絡み合い、更に下へと落ちていく。
「気分はどう?」
どうと言われても、興奮もしなければ、正常でもいられない。
「胸に、太もも、ゆっくりと彼らの視線を感じて」
そう耳元で囁きながら触れる熱が微かに電波する。爆発的な感情はない。それでも舌なめずりをする男達の視線に、徐々に息を弾ませる。
「イイね。とてもいい感じだ……。彼らにどうされたい?チヒロの望む事を彼らはしてくれる」
康介を忘れさせて欲しい。心の中から康介を排除して欲しい。
「俺を、めちゃくちゃに犯して……」
四方から伸びる男達の腕。乳首を弄られ、尻にも口にも男達の雄を受け入れながら、到達できない快楽に苦しもがく。
「かっ……はぁっ……」
それは、何度目だっただろう。どくどくと注ぎ込まれる男達の終着点を全身で感じながら気絶したのは。
「あっ、はっぁ……さいこぉ……チンポ、大好きぃー……」
目覚めるとそこには、男に跨り腰を振りながら、ペニスを咥え恍惚な顔をしたチクがいた。
「……セックス狂かよ……」
羞恥心の欠けらも無く、己の欲望に身を任せてセックスを楽しむチクを、頭がおかしいのではないかと思う半面。羨ましくも思う。
あんな風に全てを解放出来たら。
「……」
自分の手のひらには何もない。
勝手に使っていいと言われたバスルームで、男達の残滓を洗い流し終えてもなお、チクは男達に揺さぶられ続け、愉悦に浸っている。
「ぁああっ、もっと、もっとザーメンまみれにしてぇー……」
あの状況のチクに声をかけられるはずも無く、マンションをあとにした。
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