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第28話

  ゴ~ン ゴ~ン ゴ~ン ――――   遥か下方で除夜の鐘が鳴り響いている。   確か、去年の大晦日も柊二と2人でいたっけ。   ただ、状況は今とかなり違って、   いつまでもダラダラと残業が終えられない俺を   見るに見かねて柊二が食事に誘ってくれたんだ。   あの時、柊二に言われた『――絶対辞めんなよ』   って言葉に支えられ、今日まで頑張ってきた。   迫田との事を乗り越えられたのも、柊二が   陰になり日向になりずっと俺を支えていてくれてた   から。   さっき柊二から、俺達が出逢って1周年の記念   にってもらった腕時計をかざすように持って   眺める。   何の飾り気もないシンプルなプラチナの腕時計。   柊二は普段の仕事中も邪魔にならないよう   ずっと身に着けていられるようにと、   シンプルな物を選んでくれた。   (ΦωΦ)フフフ……すっごく嬉しい。   今、俺達2人は同居を計画中で、目下お手頃な   物件を探し歩いている。    「―― んん、りん~、まだ起きてんのかよ~」   隣で眠っていた柊二が身じろぎして   寝ぼけまなこで目を開けた。 「あ、ごめ~ん、起こしちゃった?」 「早く寝ないと初日の出拝めねぇぞ」   2017年1月1日の予想天気は快晴。   予定日の出時刻は午前6時*分   俺達は大阪の通天閣まで初日の出を見に行く   計画を立てていた。 「ホラ、こっちに来い」   グイッと柊二に引き寄せられ、   彼の逞しい腕の中へ ―― 「あったかぁい……」 「おやすみ、倫」 「お休み、柊二」   こうして、俺達の2017年は静かに   明けていった……。 ***  ***  ***   さて、2017年・倫太朗の仕事初めは   本日・1月3日からだ ――――、 『―― 倫ちゃんってば、  意外に乙女だったんだねぇ~』 『はいぃっ??』 『ヘイ、りんたろ。最近何気に男っぷり上がった  みたいだけど何かいい事でもあったのかい?』 『いいえー、特には』    ”何なんだろう? 今日だけでもう5度目だ”   院内ですれ違う先生方や先輩達、   食堂の小父ちゃんにまで何度も   同じような言葉をかけられた。    ”ホント、特には変わってない、けど……”   倫太朗はトイレの鏡に写ったいつもと変わらない   寝不足で疲れた顔をした自分の姿を確認して   小首を捻った。    ”イヤ、残業続きですでにボロボロだなぁ……”   今週は2回も宿直が入っていて、   やっと先日1度目を消化したところだった。   巷ではバレンタインだ・花見だかんだと、   騒いでいるが ――。   このままでは柊二にプレゼントを買っている   余裕もない……まぁ、   せめてもの救いは、来月初めに柊二と   3泊4日旅行の計画があるという事だけ。   それを思い浮かべればと自然と頬が緩んでくる。   あぁ、いかん、いかん……来月までにはまだ   ―― もあるんだよ。   今からこんな浮かれてたんじゃ、保たない。   しっかりしなきゃと、気を引き締めて、   午後イチで確認するようDrスカルから   頼まれていた薬品の在庫チェックをするため、   まず抗精神病薬等の薬品を保管している   第2保管庫へ向かった。  

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