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☆第29話

  薄暗い・冷所保存が基本の薬品保管庫は、    オールシーズン通して室温は*度から*度の間に   保たれている為、ここでの真冬の作業は半端なく   しんどい。    ”うぅ~~っ、さーみぃ……っ”と、言いつつ   その大きい体を縮こまらせながら入って来たのは、   他でもない柊二だった。 「こんな仕事押し付けるなんて、あの先輩もますます  Sっぷりに磨きがかかってきたな」 「な~にバカ言ってんだか……―― 柊二、いえ、  鬼束先生も薬品のチェックですか?」 「りん~」 「ちょっ、しゅじ ―― ダメですって……」   背後から抱きすくめて来た柊二に、   身を捩って儚い抵抗を試みる倫太朗。 「寒くて凍えそう、倫が温めてよ」    ”ハマの狂犬”と異名をとる柊二も、   倫太朗の前でだけは幸せ呆けの中年親父に   なってしまい、倫太朗の水々しいツヤ肌に   熱い唇を這わせる。 「あ ―― しゅう、じ……」 「……ヤリたい」 「えっ ――」   いつもながら、直情的な柊二の言い草に倫太朗は   絶句する。 「禁欲、何日続いてると思ってんだよ。仕事だから  仕方ねぇとはいっても、そろそろ限界だ」        無茶振りをしているのは柊二の方なのだが。       倫太朗の肩口に顔をうずめて、   切なく吐息をつく柊二は本当に辛そうで……。     その様子に、まるでこっちが弱いもの苛めを   しているような気にさせられて、正直気が滅入る。 「確か先生は本日午後いちで会議じゃなかったですか?   昼食はとられたんですか?」 「いいや、まだだ」 「なら、会議中におなかの虫を鳴らさないように、  急いで済まされた方がいいと思います」 「なら、りんたろが食べたい」 「ン……っ」   首筋をニュルッとした感触。   重ね合わせた白衣の上から胸を弄る手。   耳の裏に音を立ててキスされて、   秘所の奥がジュクリと湿り気を帯びた。    (どうしよう……     こんな事してる場合やないのに……) 「……時間、ないですからね?」   そう呟いて、   柊二に抱きすくめられたまま体を反転、   柊二に向き直り彼の頬に沿わせて、   ゆっくり唇を重ねた。   ここが、今の時期はあまり人の立ち寄らない場所で   良かった。   第2薬品保管庫はブラインドが下がっていて、   リノリウムの床に、隙間を通り抜けてきた光が色を   浮かびあがらせる。   消し忘れられている補充品の内容が、   ホワイトボードに残されて、   淡い光に鈍く反射していた。 「ホント、酷い人ですよね、あなたって」   脱がされた白衣は小机の上に投げ出され、   その下のランニングを脱がしにかかる柊二の   口付けを受けながら呟く。 「ホントに、酷い人……」   欲情に燃える視線がぶつかった。   柊二の首に腕を巻きつけ引き寄せながら、   舌を絡ませる。   手の中でぷくりと膨らむ突起に指が這わされ、   軽く摘まれると、反射的に声がこぼれた。   その突起を熱い吐息で転がされ、   唇がやわやわと食む。   浮かされる心地よさに、口元が緩んだ。 「……ぁあ…ん――…」   壁にもたれながら少しずつ降りてくる愛撫に、   久しぶりの感覚が蘇る。   ベルトを解かれ、ずり落とされたズボンの間に   膝まずいた柊二は、迷わず倫太朗の……へ   熱い唇を這わせる。 「……は、ぁ……あぁ………」   片足を肩に担がれながらの行為は新鮮で、   興奮から身体は小刻みに震え、   思わずか細い声が漏れる。   柊二はわざと大きな音をたてながら、   奥で息つく場所を、そこへ伝った唾液と   倫太朗自身の体液とで使ってほぐしにかかる。   倫太朗は肩を壁につきながら   乱れた呼吸を繰り返した。   片手で柊二の頭に回して、   もう片方で自分の突起を摘んでは、   いたずらに捏ね繰りまわす。   触り方さえわかれば、   そこだけでイける身体に変えられた。   例え揶揄されたところで余計に興奮する事に、   初めて交わった時にはもうわかっていた。   執拗に乳首を責められて、そこだけでイかされる   快感を覚え込まされ、   また奥に触られずともイく事も強要させた身体は、   枷がはずれると、もう思う通りに動かない。   せめて突起をいじって貰わないと、   お腹の奥で官能の火がくすぶったままで、   不完全燃焼の身体が酷く疼くのだ。   早く済ませて貰わないと困るのはお互い様。   だからこそ、理性が切れる前までに、   なんとかしたかった。 「いい眺めだよ」 「……ば、か……っ」   そう言いながらも、押し上げてくる劣情に、   息は荒くなる。 「も……イき、そ………っ―――おねが……キて……」 「りん……」   ガチャガチャと金属がこすれる音に反応して、   先走りが湧く。   パブロフの犬って、こんなかんじなのかな?   片足を担がれたまま、性急に押し入れられて、   反動でイきそうになるのをグッと堪えた。 「――― オイ、どこでそんなこと覚えたんだ?」 「い、一緒に、イけ、ないと、寂しぃ―――から……」   甘く啼きながら言えば、激しく求めてくるのは   立証済みだ。   早く動いてと耳元で囁くと、   柊二はゆるゆると律動を開始したけれど、   それでも倫太朗を虐めようとする動きに、   おのずと自分から腰を動かす。   柊二は浅いところを出し入れするだけで、   一向に奥を突こうとしない。   痺れを切らして乱暴に口付けようとしたら、   不意に顔を避けられた。   もう泣きたい気分だ。 「……しゅ、じ……、しゅ ―――……」   頬に流れる涙をおかまいなしに、   一層弱々しい声をあげると、   真剣な目で見つめられた。胸がドキンと高鳴る。 「……愛してる。誰よりも、愛しているんだ、りん……」 「しゅじ……」 「りんっ」 「ひあぁぁっ!」    伸びた腕にきつく抱きしめられる。   同時に最奥まで抉られて、擦れた声が漏れた。 「ぁ、あ、も――イイ……っ、突いてぇ。そこっ、  もっと――……っ!!」 「――オレを、オレだけを求めてくれ」   突き上げは激しくなり、   押し付けられながら穿たれ息が詰まる。 「あぁぁっ! だめ……っ、激し……すぎ……っ!」 「愛してる……愛してるんだ……こんなに、  誰かを強く思ったことなんか、ない……っ」    「倫……っ」と、熱い吐息と共に囁かれ、   倫太朗は絶頂への坂を一気に駆け上がった。   倫太朗が息を詰めた時、最奥に弾けた蜜を感じて、   唐突に湧きおこる快感の嵐に煽られ倫太朗も   絶頂に達した。   柊二は軽く身震いをして、ゆっくりと引き抜こうとした。   けれど、若い倫太朗にはまだ全然足りなくて。   火をつけられた身体はおさまるまで燻ぶり続ける。   こんな状態で、とても仕事なんか出来っこなかった。   嫌だとばかりに力を込めたら、   柊二は苦笑してため息を溢した。   こめかみに、頬に、耳たぶに、小さなキスが降る。 「はぁ……はぁ……ね、ぇ、もう、少し時間、ある?」 「ふふふ……王子のご要望とあらば、無理にでも  作るさ」

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