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第35話 ……は犬も喰わない

  興奮の小旅行から戻って数日後の事 ――。   間取りは1LDK。   全体的にこざっぱりとしたインテリアで   まとめられている室内。   この室の住人は男なのか?   男物の衣服がソファーの上に放置されたままで、   男性向け風俗雑誌とかも出しっぱなしだ。   すると、外の廊下を人の話し声と靴音が   近付いて来て、この室の玄関前で止まり。   続いてこのドアのロックを開けた音がして   ドアも開き、戸口へ倫太朗と和泉京介が姿を現す。 「どうぞ~、ここんとこ残業続きで散らかしてるけど」 「んじゃ、お邪魔します」   2人でLDKへ入って来て、京介はキッチンの   ミニ冷蔵庫から2人分の飲み物を取り出しながら、 「ビールでいいよね?」 「ん、ありがとう。けど、ホント急にごめんね」 「いいよ、いいよ。寧ろ嬉しい、倫って全然頼って  こないんだもん ―― で、ケンカの原因は?   それくらい教えてよ? 泊めてあげるんだからさ」 「……」   恐らく、他人からすれば他愛のない痴話げんか、   なのかも知れない。  ***  ***   事の起こりは、昨日の夕方、そろそろまじめに   大掃除をと思った倫太朗は、   柊二の寝室のクローゼットの整理をし始めた。   そしたら、隅っこの方から大量の名刺を発見。   きっと柊二の仕事関係の物だと思った倫太朗は   ついでにそれもキレイに整理しておこうと   それらを取り出した。   でも、それは仕事関係の名刺ではなかった。   だから、倫太朗はその夜 ――    「―― あのね、柊二、無断で悪いとは思ったんだけど  片付けしてたら見つけて……コレって……」 「!!……」 「……全部、風俗のお店だよね?」 「いや、まぁ、違わない、けど……でも違う。お前が  考えてるような事じゃない」 「俺が何を考えてると?」 「いや、だからその ―― 通ってたのは昔だよ。  今はあんまし行ってない」   柊二、語るに落ちる。 「あんまし?」 「だからっ、あくまでも仕事上だけの付き合いさ」    (オレ、何でこんな焦って言い訳してんだ?) 「けど、飲むだけならソープじゃなくてもいいよね?」 「チッ ――、煩いな、お前には関係ないだろっ」 「!!」   パタ パタ パタ パタ ―― バタン!  ***  ***   倫太朗は思いっきりゲストルームのドアを閉めた。   そして内鍵をかけ朝まで出て行かなかった。   朝も柊二とは会話がなく。   仕事へ出て、職場でもお互い目を見合わす事も   しなかった。   ―― という事を、倫太朗は京介に掻い摘んで   説明した。 「ひっどーい! あり得ないね鬼束センセ。  ぼくなら絶対股間蹴りあげてたよ」   そう憤慨する京介のパートナーも同性でしかも   只今、超遠恋(遠距離恋愛)中。 「股間って、いくら何でもそこまでは……」 「でも、腹が立ったんでしょ? ソープ通いに」 「それも嫌だけど、柊二、俺には関係ないって」 「あ~、なるほどね。不安定な関係だね倫達も。ま、  何もお構い出来んけど、気の済むまで泊まってきな」 「……お世話になります」 「お世話します」  

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