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第3話(蒼衣side)

紺に気持ちを伝える気になったのは、教室で聞いた女子たちの会話がきっかけだ。休み時間、さざめくようなクラスメイト達の話し声。 机に頬杖をついて外を眺めてた俺の耳に、ふいに飛び込んできた賑やかな声。 「やっぱさー、ずっと好きだったなら最後に気持ち伝えたいじゃん!」 「えー、でもさー、断られた時の事考えるとさー。気まずくなるのもなぁー。」 「何言ってんの!あんた、しつこいくらいずーっと好きだったじゃん!いいの?このままただの友達で終わって。断られたって卒業じゃん!会わなきゃいいじゃん。 卒業式に告白なんかされたら、私だったら一生忘れないと思うけどなぁ。」 何か自分に言われてるみたいな気持ちになってしまって。 そう、しつこいくらい、ずっとずっと紺が好きだった。自分がゲイなのかはよく分からない。 紺しか好きになった事が無いから。 友達づらして側にいながら、ずっと見てた。その気持ちはやっぱりどうやったって恋心で。 黒髪を弄りながら話す癖も。 笑うと糸目になる涼やかな目元も。 俺よりも15センチは高い、程よく筋肉のついた身体も。 ずっとずっと見てた。 どこにいたってすぐ見つけてしまう。 卒業したら、こんな風にみつめていることすら出来なくなってしまう。想いを告げずに友達として接していれば、たまになら会ったりする事も出来るだろう。 仲のいい親友として。 でもそれよりも。 紺の一生忘れられない思い出になりたかった。 卒業式、と聞くと思い出してしまうような。 馬鹿にしたり、気持ち悪がったりはしないはず。 俺が好きになった奴はそんな事するような男ではない。 優しくて、優しすぎるから、きっと苦しい想いをさせてしまうかもしれない。 でも紺の人生に俺という爪痕を残しておきたくなってしまった。 想いを伝えよう。 卒業式の後に時間を作って欲しいと、震える指で紺にLINEした。 もうただの友達には戻れない。 親友終了までのカウントダウンが聞こえるような気がした。 その夜、俺に眠りが訪れる事は無かった。 夜から朝に変わる、青すぎる青の部屋の中。ベッドの中でじっとしたまま、ただ明るい朝の日差しが差し込むのを待っていた。

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