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第4話(紺side)

卒業式の日は、3月に入ったというのに小雪のちらつく肌寒い日だった。まぁ、雪国だから珍しい事でも無いんだけど。 何か行事がある時は大概雪が降るんだよなぁ。 大雪の日に生まれたからだろうか。 上を向いて、仕方なさそうに降ってくる雪をぼんやり眺めた。 卒業式はそれなりに、感慨深いものだった。 周りの女子達みたいに大っぴらに泣いたりはしないけど。 最後のホームルームも終わり、卒業アルバムも受け取り後は帰るだけ。 この後どうするかやら、スマホで写真を撮っていたり、教室の中は賑やかな声で溢れている。 「紺。」 振り向くと蒼衣が緊張したような、強張った顔をして立っていた。 「あ、何か話があるって言ってたよな?」 「う、うん。いつもんとこ行って話してもいい?」 「おう。さみーからコート来て帰り支度して行こうぜ。」 「分かった。」 身支度をしようと机の上のコートを取ろうとした時、「ガタン!」という派手な音がしたので、振り返る。 自分の席に戻ろうとした蒼衣が机にぶつかったのか、足のすねを押さえてしゃがんでる。 「蒼衣、大丈夫かよ。お前何慌ててんの?」 「…いや、ごめん大丈夫!」 またしゃがんでいる蒼衣の頭に手を乗せて、色素の薄い茶色い髪を撫でる。 「立てるか?」 よほど痛かったのか、俺を見上げた顔には涙が滲んでいた。肌が白いので目元の赤みが目立つ。じいっと見つめていると、 「準備する!」 またもや慌てたようにすっくと立ち上がり自分の席に戻っていった。 いつも休み時間やちょっとサボりたい時、よく2人で行っていた屋上へ向かう。 鍵が掛かっているので外には出れず、入口の手前の踊り場が俺達の定位置だった。 2人で屋上への階段を登っていると、上からバタバタと騒がしい足音が聞こえた。上を見ると女子生徒が泣きながら走って階段を降りていく。 しばらくすると男子生徒が降りて来た。隣のクラスの奴だ。 バツの悪そうな顔をしながら、俺らをちらりと見て早足で降りて行った。 「あー、卒業式だからなぁ。…可哀想にな、振られちゃったんかな。」 蒼衣を見ると唇を食いしばってうつむいている。 1番上まで来たので腰を下ろす。うつむいたまま、座ろうとしない蒼衣に声をかける。 「蒼衣?どした?座んねーの?」 「紺!俺さ…。」 思いもよらない、蒼衣からの告白だった。 ただただ、びっくりして、俺は相当間抜けな面をしてたと思う。 声も出せなかった。 そんな俺を見て、一瞬蒼衣が傷ついたような、痛みを堪えているような顔をした。 でも次の瞬間、無理矢理笑顔を作って言った。 好きになってごめん、と。ありがとう、と。 堪え切れずに、溢れてくる涙を拭いもせずに。 唖然と立ち尽くす俺を置いて、走って階段を降りて行った。

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