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やめてください。
この夏川君の匂いはやけに落ち着くんだ。
シトラス系なのかけれど甘い感じもしていて僕はこの匂いが好きだ。
『好きだ。』
言葉が頭に響いて来て甘く耳元で囁かれていたのを思い出した。
そうだ先程まで僕はその声を聞いてた。
それとは明らかに違う声が頭の中で聞こえて来るから僕が言われた事を思い出そうとした瞬間に身体が急に震えだした。
あの声は・・・。
忘年会の日、僕は飲み過ぎて少し風に当たるつもりで店を出たんだ。
店を出ると腕を引っ張られて細い路地に連れ込まれた。
前から抱きしめられて抵抗しようとしたがお酒が回っていて力が入らなくてそれから声の主は耳に舌を這わせながら言ったんだ。
「せっかちだね、君は」
「やっ・・・やめ・・・くださっ・・・・い。」
怖くて泣きそうになりながら僕は出来る限りの声を振り絞ってお願いしたんだ。
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