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好きなんだ
それから夏川君との昨晩の出来事が走馬灯の様に思い出されて全て思い出した時には僕は身体が痛いのも忘れて寝室から飛び出していた。
けれどどこにも夏川君が居なくてリビングの床にへたり込んで頬を伝う涙の感触を確認するかの様にポロポロと涙を流し声を殺して泣いていた。
ガラッ!
「光輝さん?どうしたんですか?」
ベランダの扉が開き慌てた様子で部屋の中に夏川君が入って来た。
仄かにタバコの匂いがする。
夏川君はベランダでタバコを吸っていたのかと少しだけ胸を撫で下ろしたが涙は更にポロポロと目から溢れ出して来た。
気づいた・・・僕は夏川君に恋をしている。
「・・き・・・らい・・・に・・なら・なっ・・うゔっ・・・。」
嫌いにならないでと夏川君に伝えたいけれど苦しくて声が出ない代わりに涙が出てくる。
フワッと暖かな物に包み込まれたかと思うと力強く僕の身体は抱きしめられていた。
「な・・つか・・・わ君。」
「泣かないで下さい。俺は光輝さんを泣かせたくないです。好きだから大切な人だからお願いします泣かないで光輝さん。」
こんな僕を好きだと言って強く抱きしめてくれる夏川君。
「僕でいいの?」
「光輝さんがいいんです。光輝さんは俺でいいんですか?」
抱きしめられた腕が緩められて夏川君は両手で僕の頬を包み込み上を向かせた。
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