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第119話
息つく暇もなく口内を嬲り続け、斗真の抵抗する力がなくなったのを感じてから、ゆっくりと唇を離した。
二人とも息が上がっている。
「斗真…お前が何を心配しているのか知らないけど。
もう、絶対にお前を離さないし、離れない。
俺はもうずっと前から腹を括って覚悟はできてる。
『覚悟しろ』ってお前も言ったじゃないか。
あれは嘘か?
お前、俺に嘘をついたのか?お前の家族にも?
そんな嘘いらない!
俺は…
俺は、お前しかいらないっ。」
吐き捨てるように言うと、斗真を置いて部屋を出た。
バタン
裸のままバスルームへ直行する。
バカ斗真。
何考えてんだ。
そんなこと言うくらいなら、俺を受け入れるなよ。
やっと…やっと想いが通じ合ったと思ったのに…違うのか?
俺の独りよがりだったのか?
真っ黒な感情を洗い流すように、長い時間をかけて頭からずっとシャワーを浴び続けた。
いい加減 熱気にむせて、風呂から上がると、鏡に酷い顔の俺が映った。
自虐的な笑いが込み上げてくる。
十年間想い続けて恋焦がれ、日本まで追いかけてきて、いろいろ誤解やすれ違いがあったものの、お互いの想いを確かめ合ってやっと結ばれたと思ったのに。
一生愛する相手とともに生きていけると思ったのに。
あれは幻だったのか?
俺の勘違い?
頭の中をこれまでの出来事がぐるぐると回っている。
洗面台に掛けた手が力を失い、ズルズルと身体が落ちていく。
へたり込むように床に座った瞬間、目の前が真っ暗になっていった。
「…希…大丈夫…おい、希?希っ!しっかりしろっ!希、希っ!」
薄れゆく意識の中、俺を揺さぶり、名前を呼ぶ斗真の声が遠くに聞こえたような気がした。
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