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第120話

どこか…二人で歩いていた。散歩?買い物? 一緒に歩いていた斗真が急に遠くなった。 「おい、待てよ斗真。ゆっくり歩けよ。」 返事のないまま振り向かない斗真と、どんどん距離が離れていく。 「おい、斗真…斗真っ!斗真ぁーーっ!!」 斗真が見えなくなったところで目が覚めた。 じっとりと嫌な汗が噴き出し、心臓がバクバクしている。 見慣れた天井。 慣れた肌触りの布団。 なんだ、俺の部屋じゃないか。 目尻を冷たいものが流れる感触がして、触ると濡れていた。 俺、泣いてたのか? 「希っ!気が付いた?よかった…起きれるか?」 目の前に心配そうな顔の斗真の顔があった。 頷くとそっと起こされ、差し出された経口飲料水を一気飲みした。 「お前、風呂に入ったまま出てこないし…心配になって見に行ったら洗面所で倒れてて… 顔も身体も真っ赤で熱持ってたから、取り敢えず冷やしてさ、水飲ませて…多分逆上せちまったんだな。 あれからずっと目を覚まさなくて… 気分はどうだ?頭痛くない?」 「…大丈夫だ。ありがとう。…迷惑かけたな…悪かった。」 「水は?もう少し飲んどくか?」 「…うん。」 「わかった。ちょっと待ってて。すぐ持ってくるから。」 斗真が部屋を出ていったのを見て、大きなため息をついた。 アイツが俺達の関係を否定しようとするから、腹が立って口喧嘩みたいになって… 挙句に逆上せて介抱されて… 何か俺、滅茶苦茶カッコ悪い。 おでこに手をやると冷えピタが貼ってある。 経口飲料も常備してないのに、わざわざ買ってきてくれたのか? ペットボトルを持って慌てて斗真が近付いてきた。 プシュっとキャップを開けると目の前に差し出され、小さな声で「ありがと」と言い、受け取った俺は、半分程飲んで大きく息を吐いた。 「…もういいのか?」 黙って首を縦に振ると、斗真はボトルを受け取ってテーブルに置いた。 「汗かいてるな…今はまだ動かない方がいいし、拭いてやるよ。」 「…自分でするから…出て行ってくれ。」 拒絶しても斗真は俺の言葉を無視して、俺のクローゼットから着替えを用意し始めた。

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