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第128話

「希、希っ!どうした?どこか痛むのか? あぁ、どうしよう…そうだ、救急車!」 寝室に飛び込んできて、携帯の緊急発信ボタンを押そうとする斗真を止めた。 「救急車はいらない…それより聞きたいことがある。」 胸を押さえながらベッドから起き上がって、斗真を見据えた。 「今、お前は俺のことをどう思ってるんだ? 正直に言ってくれ。 …もし、俺の記憶を無くした責任を取ろうとしてるなら、それは必要ない。」 斗真は俺をじっと見つめていたが、俺の側に来て跪くと両手をそっと包み込んだ。 「今までも、今も、これからもずっと愛し続ける。 例えお前の記憶が戻らなくても、俺のことを受け入れてくれなくても、俺はお前を思い続ける。 お前だけだ。愛してる、希。」 「…さっき病院に行ってきたんだ。 『恐らく極度のストレスによる、一過性の記憶障害だろう』と言われたよ。 いつ治るかも、どうやったら治るのかもわからない。 それに 恋人だったというのはわかった。 でも『俺』は今、お前に特別な感情は持っていない。覚えてないんだ。 そんな今の俺に愛を伝えても報われないんだぞ? 例え記憶が戻っても、お前を選ぶかどうかはわからない。」 「それでもいいんだ。 希は俺のことを十年想い続けてくれた。 だからこうやって俺達は恋人になれたんだ。 俺は、報われなくてもいい。 希のことを想って、希が幸せになってくれたらそれでいい。 でも、 今は側にいさせてほしい。 お前が俺を想って追いかけてくれたように、今度はオレがお前を追いかけるよ。 それに…何もない真っさらな状態で、俺に惚れさせてみせるから。」

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