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第129話
「くっくっ…大した自信だな。
仮にも俺達は恋人同士だったんだもんな…
俺も…俺が愛してた『影山斗真』という男をもっと知りたい。
俺達が辿ってきた過去も…
お前の気持ちはわかった。お手並み拝見といこうか…
あの…ところで、俺ってお前を攻めてたの?それとも受け入れてたの?」
「お前は…俺を攻めてた。」
「そ、そうか…そうなんだ…うん…わかった。
そうなんだ…
これからどうなるかわからないけど、
じゃあ、とりあえず腹減ったし、メシ作ってくれる?」
「了解!とびきり美味いやつ、食わせてやるよ。待ってて!」
ホッとしたような顔で斗真が答えた。
キッチンに行った斗真を追って、俺もリビングへ戻った。
ぎこちないながらも『(仮)恋人』のスタート。
俺、アイツを抱いてたのか。
ふと携帯を手に取ると、ラ◯ンが入っていた。
『田中 悠太』
あぁ、某百貨店の外商のエースか。
『お疲れ様です!
昨日はわざわざお越し下さりありがとうございました!
お幸せそうで何よりです。
いろいろと取込み中でしょうし、電話ではなく敢えてこちらから連絡させていただきました(笑)
ご用意できましたので、ご連絡下さい。
パートナーさんにお会いできるのを楽しみにしてますよ。
では、また。
よろしくお願い致します。』
彼とは異業種懇親会で意気投合して、何か高額の買い物がある時には是非 と言われてたんだよな。
それで、俺は彼のところへ行ったのか…
これは田中君のところのパンフレットだったのか。
結婚指輪を頼みに行くなんて、俺、マジだったんだ。
これを頼みに行った時って、俺はどんな気持ちだったんだろう。
十年越しと言ってたけど…あの斗真と両想いになって浮かれてたんだろうな。
これ、もう、できちゃってるっぽいし断るわけにはいかないよな…
前金で全額支払い済みたいだし。
とにかく返信しておかないと。
『お疲れ様です。
お忙しいのにお時間いただいて、こちらこそありがとうございました。
今、バタついているので、次の休みに伺います。
また連絡いたしますので、よろしくお願い致します。』
直ぐに既読が付いて返事が来た。
『はい!お待ちしてます。
いいなぁ、新婚さん。羨ましいです。』
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