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第132話

「なぁ、斗真。」 「んー?何だ?」 「結婚を決めたってことは、一緒に住む予定だったんだろ?」 「…あぁ。ここの方が広いし通勤に便利だからって、俺が引っ越してくる予定になってた。 でも……こんなことになってしまって…俺のところはもう解約手続きしてしまってるから…新しいとこ探さないとな…」 「お前といたら何か思い出すかもしれない。 …そのまま引っ越してくればいい。」 「えっ!?ホントに!?いいのか!?ありがとう!!」 ぱぁーーっと花が咲きそうな満面の笑みで、いきなり抱きついてこられた。 瞬間、雄臭い斗真の素の匂いに包まれた。 この匂い…覚えてる…安心する…好きだ…大好き… 抵抗するのも忘れて、その匂いに酔ってしまう。 余りに気持ちよくて、うっとりとその匂いを嗅ぎながら、閉じる瞼を引き上げることはできなかった。 どのくらいそうしてたのか 気が付くと、ベッドに横たわっていた。 えっ!? 思わず布団をめくると、服はそのままで乱れたところはない。 変にホッとして起き上がり、リビングに行くと 「希、起きたのか?」 「ごめん…寝ちまった。」 「いろいろあったから…起こしても起きないし、寝かしといた。」 「うん、ありがとう…」 何だか恥ずかしい。 コイツの匂いに安心して寝てしまうなんて。 ヤバい。目を合わすことができない。 ドキドキと五月蝿い鼓動を何とか落ち着かせ、所在無さげにソファーの端に座ると 「希の好きなアイス買ってきたんだけど、食べる?」 「食べる!!」 「はい。今日 新発売の、中がチョコレート味のやつだから。」 「ありがとう…」 俺のお気に入りのメーカーの…食べ物の好みも知ってるんだ。 当然か、恋人だもん。 よく見ると、斗真は顔も精悍で整ってて、かなりのイケメンの部類に入る。 均整の取れた身体は、脱いだら筋肉すごいんだろうな…って何考えてる?俺。 溶けかけたアイスにかぶりついて、妄想を払い拭う。 『俺に惚れさせてみせる』 斗真の台詞が思い出され、思わず身体がカッと熱くなった。

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