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第133話
「あっ」
動揺したせいか、胸元にべちゃりと溶けたアイスが落ちた。
「待ってろ。」
ティッシュを手に斗真がやってきた。
「じ、自分でやるから。」
「そのままじっとしてて。」
ややキツい口調で言われ、言う通りにしていると、アイスを拭き取る時に斗真の指が俺の乳首を何度も掠めていく。
くっ
敏感なその部分は、もう、多分、固く立っているはず。
ワザとか?気のせいか?
斗真の顔を盗み見ると、平然としていた。
「洗濯するから直ぐに着替えてきて。」
優しく言われて、今のは気のせいだと思い込み、着替えに行った。
汚れた部分をつまみ洗いしていると、斗真がやって来た。
「俺がするから座っときなよ。」
「ん、もうすぐ終わるからいいよ。」
ザァーーーーッ
「あー、冷たい水で洗うから…手が真っ赤になってる…それにお湯で洗わないとチョコレート固まっちゃうよ。」
横取りされて、むうっと頬を膨らませると、濡れた手で頬を突かれた。
斗真は冷たくなった俺の手をお湯で温めてくれた。ふと、俺の手の平の傷に気付き
「希…この傷は?…まさか、あの時の…?」
両手を包み込んで、親指でそっと傷をなぞった。黙って何度も、何度も…
触れたところから斗真の優しさが沁みてくるような気がして、振りほどけなかった。
触られるのは嫌じゃなく、むしろ気持ちよくて仕方なかった。
ふと顔を上げた俺と、斗真の視線が絡まった。
次第に近付いてくる顔…
キス…される?
柔らかな物が唇に触れた。
この感触…覚えてる…
躊躇った後、思い切って斗真の背中に手を回す。
びくっと反応した斗真が力を込めて俺を抱きしめた。
「希…好きだ、好きだ…愛してる…」
心地よいトーンの甘い声が身体を駆け抜けていく。
抱きしめられて抱きしめて、どのくらい時間が経ったのだろう。
斗真がゆっくりと俺から離れた。
「これ以上は我慢できないから。」
照れくさそうに笑うと、リビングへ行ってしまった。
知ってる。覚えている、あの熱を。
俺は右手の人差し指で、斗真が触れてきた自分の唇をそっとなぞった。
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