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第138話
キッチンから漂ういい匂いに起こされた。
無意識にシーツを探ると、隣にあったはずの温もりはもうなく、冷んやりとしていた。
眠い目を擦りながらリビングへ向かうと、テーブルの上には弁当が二つ並んでいた。
「希、おはよう。朝メシできてるから食ってくれ。」
「…おはよう、斗真。早いじゃないか。もう、用意してくれてたのか?
弁当まで…ありがとう。」
「うーん、目が覚めちまってな…さ、冷めないうちに!」
美味すぎて朝からお代わりをして斗真に喜ばれ、ちょっと照れくさい気分で急いで片付けと支度を済ませると、二人で家を出た。
「このままボスのとこに直行だな。」
「あぁ…仕事には差し支えないから休暇はもらえないだろうな…」
あとは無言でボスの部屋へ向かった。
ドアは…開いている。
「「おはようございます!ボス!
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」」
綺麗に二人でハモった挨拶に
「やぁ、恋人達!honeymoonは満喫したかい?
いくらラブラブでも、会社では上司と部下だからね。」
上機嫌なボスに水を差すようで申し訳ないが、これだけは伝えておかないと…
「そのことなんですが…
俺の覚悟のない心ない言葉で、希を傷付けた結果、俺に関する記憶だけが希からなくなってしまったんです。
だから…恋人と言われても…今は(仮)恋人で…
俺はそのつもりでも、希にはない ってことなんです。」
「ボス、仕事には全く支障がないので大丈夫です!」
「Oh mio Dio! (オー ミオ ディーオ!=何てこった!)
遠藤…本当か?」
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